【ワシントン=塩原永久、北京=三塚聖平】米財務省は13日、貿易相手国・地域の通貨政策を分析した外国為替報告書を発表し、中国の「為替操作国」指定を解除した。米中が15日に署名する「第1段階」の貿易合意で、中国が人民元の切り下げを自制する約束をしたと評価した。米トランプ大統領は再選に向け「ディール(取引)の成果」を誇示するが、中国との融和演出とも受け取れる。米野党側から弱腰と非難も上がるなか、中国と新たな経済対話を立ち上げ圧力を維持する構えも見せている。
中国外務省の耿爽(こう・そう)報道官は14日、米財務省から「為替操作国」指定を解除されたことを「もとより中国は為替操作国ではない。米国の結論は事実や国際社会のコンセンサス(合意)に合致している」と歓迎。「中国は責任ある大国として、競争的な通貨切り下げをしないし、為替レートを道具にもしない」と強調した。
トランプ米政権は昨年8月、中国が人民元を不当に安値誘導しているとして、25年ぶりに中国を為替操作国に指定。トランプ米大統領がツイッターなどで中国批判を強めていた。
貿易交渉の一環とはいえ、為替操作国指定解除の唐突感は否めない。だが、ムニューシン米財務長官は声明で、「中国は競争的な通貨切り下げを控えると拘束力の強い約束をした」と説明。操作国より問題が深刻でない「監視対象」に中国を指定した。監視国には、日独中に加え、韓国、イタリア、シンガポール、ベトナムなどを指定。為替操作国の指定はなかった。
指定解除には、米国内から批判の声も出ている。民主党上院トップのシューマー院内総務は「トランプ大統領は習近平国家主席に強硬であるよりも屈服しようとしている」と指摘。「第1段階」の米中貿易合意についても、膨大な労力を費やしながら成果は「わずかだ」と非難した。
米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、署名に合わせて米中は、両国の経済閣僚らが幅広く参加する経済対話の枠組み設置で合意する見込み。半年に1度開き、中国の構造改革などの対立点を協議する。