近い将来の発生が懸念される南海トラフ地震の想定震源域の海底下で、「ゆっくり滑り」と呼ばれる地殻変動が起きたことを東京大と海上保安庁の研究チームが観測し、米科学誌電子版に15日発表した。巨大地震が発生するメカニズムの解明に役立つと期待される。
ゆっくり滑りはプレート(岩板)境界の断層がゆっくりと滑り、地震を起こすひずみが徐々に解消される現象。東日本大震災が起きる引き金となった可能性も指摘されるなど、巨大地震との関連が注目されている。南海トラフ地震の想定震源域では陸側で確認されてきたが、海域での観測は難しかった。
研究チームは測位衛星と海底の観測装置のデータを解析し、南海トラフに近い場所で平成30年までの13年間にゆっくり滑りを計8回確認。発生場所が特定できたのはうち1回で、29年末から30年半ばにかけて、潮岬から室戸岬までの沖合でマグニチュード(M)6・6に相当するひずみが解消されたことを突き止めた。
このすぐ北側には、プレート境界が固着してひずみがたまっている場所があり、南北でひずみの蓄積量の差が拡大した形で、チームは巨大地震が誘発される可能性もあるとみている。