--東京五輪・パラリンピック後の日本経済を懸念する声がある
「私は『そうではない』派だ。その証としては、富裕層向けホテルの建設ラッシュが(出身地の)鹿児島などの地方も含めて続いている。そして、その背景には、訪日客観光を推進する国の政策や、ラグビーワールドカップで日本全国の人気が高まったことがある」
--訪日客向けの観光施策に力を入れている
「観光庁の推進するキャンペーンに合わせて、東京と東北の各空港を結ぶ5000~1万円の区間のチケットを期間限定で2020円にするフェアを五輪期間中に開催する。これ以外にも周遊型の運賃で割り引こうと考えている。ラグビーワールドカップで地方の魅力が世界中に広まっており、五輪で日本に来た人には各地を訪問していただきたい」
--政府が今年の目標とする訪日客4000万人は達成可能だと思うか。JTBは未達の見通しを発表したが
「可能と思う。JTBさんにも申し上げたが、まだげたを履くまではわからない。地方の魅力を発信するなどしっかりと協力していきたい」
--昨年の家電・ITの展示会「CEATEC(シーテック)」で、目と耳、足の機能を備えた分身ロボット(アバター)を発表した
「導入の申し込みが動き始めている。地方の自治体や病院からも引き合いがあり、手応えはいい。社会貢献でやっているわけではないので収益につなげるのが必要だ。担当している社員は非常に積極的で、政府も事業に関心を持ってくれている」
--アバターは社長の肝煎り事業で、アバターを通して宇宙旅行の疑似体験も目指しているとのことだが
「宇宙は子供の頃から好きで、入社した頃は国際線にも参入していなかったが、『将来は宇宙旅行を始めているだろう』と語っていた。でも今、手掛けているのは、宇宙の衛星のごみを回収する会社にわずかに出資している程度だ。ただ、宇宙はキーワードで、日本政府も安全保障や気象衛星などで宇宙に注目しており、人類をある意味で豊かにするのが宇宙空間だと思う。将来、私の世代ではないが、次世代や次々世代の生活空間になるであろう宇宙の事業に片足を突っ込んでおくのは使命だと思っている」
--アバターの事業化の方向性は
「アバターには応援してくれる研究者も多い。彼らや担当者は世の中をテクノロジーで変えたいと本気で考えている。事業化に向けては、なるべくANAらしくない自由な発想やオープンな感じで、自社利益優先ではない方向でと考えているが、固まってはいない」(経済本部 大坪玲央)