【北京春秋】引く手あまたの北労働者


 昨年12月中旬、中国吉林省の朝鮮族料理店に入ると、ピンクのツーピースを着た若いウエートレス4人が昼食時の給仕を担当していた。いずれも北朝鮮人だ。1カ月前に平壌から来たばかりだという女性(21)に、何人ぐらいのグループで出稼ぎに訪れたのか聞くと「そんなこと聞かないで」と口ごもった。

 国連安保理の決議が加盟国に義務付けた北朝鮮労働者の送還期限まで5日を切っていたが、国境近くの工場や飲食店で働く労働者たちは一斉帰国どころか増えている節もあった。

 延辺朝鮮族自治州の延吉は人口約55万人のうち6割近くが朝鮮族で、街中にハングルの看板があふれる。地元関係者によると近年、北朝鮮政府が経営に関与する北朝鮮レストランだけでなく、一般の飲食店でも北朝鮮人職員が増えている。

 朝鮮族の多くの若者は韓国へ出稼ぎに行き、人手不足だ。ぶっきらぼうな接客も多い漢族に比べて、自国で訓練を受けている北朝鮮人の接客態度は丁寧で、観光都市・延吉の売りである朝鮮族文化をアピールできるメリットもあるという。

 ただ当の北朝鮮労働者たちの心境は複雑なようだ。遼寧省瀋陽で働く女性(24)は「平壌よりコメはまずいし空気も悪い。大声でしゃべる中国人にもなじめない」と漏らした。(西見由章)



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