四国電力伊方原発3号機の運転を差し止めた17日の広島高裁の決定要旨は次の通り。
【主文】
第一審判決の言い渡しまで、伊方原発3号機を運転してはならない。
【司法審査の在り方】
伊方原発から約三十数~四十数キロの距離に住む抗告人らは、放射性物質が放出される事故が起きた際、重大な被害を受けると想定される地域に住む者といえる。そのため、被害を受ける具体的な危険がないことは四国電が立証する必要がある。新規制基準に不合理な点がなく、伊方原発が審査基準に適合するとした原子力規制委員会の判断に不合理な点がないと示すことで立証できる。
【地震に対する安全性】
伊方原発近くの中央構造線断層帯の震源断層について、四国電は不確かさを考慮して基準地震動を策定しているが、地震動評価でその影響はなく、規制委の判断が不合理とは言えない。
四国電は詳細な海上音波探査をし、佐田岬半島北岸部に活断層は存在せず、活断層が敷地に極めて近い場合の評価は必要ないとして地震動評価を行っていない。中央構造線断層帯長期評価(第2版)には、佐田岬半島沿岸に存在すると考えられる中央構造線を「現在までのところ探査がなされていないために活断層と認定されていない。今後の詳細な調査が求められる」と記載があり、海上音波探査では不十分なことを前提にしていると認められる。
同長期評価の記載などを考慮すると、中央構造線自体が正断層成分を含む横ずれ断層である可能性は否定できない。その場合、地表断層から伊方原発敷地までの距離は2キロ以内で、仮に十分な調査で活断層だと認められた場合、地震動評価をする必要がある。しかし、四国電は十分な調査をしないまま原子炉設置変更許可申請し、規制委は問題ないと判断した。規制委の判断には、その過程に過誤や欠落があったと言わざるを得ない。