(3)大麻は週に2~4回「楽しい心が超回復。楽しみすぎて…」
《弁護人に渡したノートに関して持論を展開する植松聖(さとし)被告。韓国の俳優をテレビで見て、日本も男性は1年間訓練すべきだ、などと語った》
植松被告「鉄は熱いうちに打てというように精神が柔軟なうちに厳しい試練を与えないといけないと思いました。簡単に心が折れなくなると思います」
弁護人「今の日本人は弱いということですか」
植松被告「はい。引きこもりが多いのも厳しい試練を乗り越えなかったからだと思います」
弁護人「兵役の義務を課すと引きこもりが減るのか」
植松被告「はい。体が健康になると精神も健康になります」
弁護人「精神が健康じゃない人がいるように聞こえますが」
植松被告「はい」
弁護人「義務は日本の戦争より前のイメージか」
植松被告「戦争より前のことは勉強不足で…」
弁護人「韓国のイメージか」
植松被告「そうです」
弁護人「義務というところがポイントか」
植松被告「そうかもしれません」
《植松被告は弁護人の目を見て回答している。その姿を裁判員や被害関係者、傍聴人らが注視している》
弁護人「次に男性と女性の関係についてです」
植松被告「いろいろな欲求がありますが、性欲は間違った快感を覚えると人を傷つけます」
弁護人「どういうことですか」
植松被告「避妊をもっと当たり前のものにすれば。例えばコンビニでピルを買えるようにするとか」
弁護人「今のままだと」
植松被告「子供をつくりたくないのにできた場合、虐待を受けることがある」
弁護人「どんな情報からそう考えたのですか」
植松被告「ニュースを見て思いました。事件を思いついてからそう考えました」
《思考の元はニュースやネットらしい。そこに飛躍や曲解が複雑に混ざり、独自の論が形成されているようだ》
弁護人「次。主に女性の体形や容姿も考えたのですか」
植松被告「女性じゃなくても人間は美しい方がいいと思います。美は善行を生むと思います」
弁護人「そのためには」
植松被告「整形手術を国が負担してもいいと思いました。ただ子供は遺伝子を引き継ぐので交際前に整形の有無を報告すべきだと思います」
弁護人「みんな整形すべきということ」
植松被告「整形より医療脱毛の方が大切かもしれません」
《医療脱毛の話になり、事件の約1年前に脱毛していたことを告白。『顔もきれいになって心もきれいになった』のだそうだ。また『かっこいい方がいい』と考え、ジムにもいっていたという》
弁護人「美は善行を生むことの関係性は」
植松被告「客観的に自分を見ることが大切だと思います」
弁護人「7つめ。環境については」
植松被告「深刻な環境破壊による温暖化防止のために、遺体を肥料にする森林再生計画に賛同します」
弁護人「遺体とは」
植松被告「人間の遺体です。捕まってから考えました」
弁護人「人間の死体をこういうことに使うのは…人間であればよいのですか」
植松被告「はい」
《自らの発言に自信をにじませる植松被告。7つのテーマについて回答を終えた》
弁護人「あなたが考えてきたことを聞いてきました。これらはいずれもやまゆり園で働き始めてから考えたことですか」
植松被告「そうです」
弁護人「ソースや情報など、誰かに教えを乞うことはありましたか」
植松被告「そういうのが積み重なって、思いついたのかもしれません」
弁護人「誰の影響とかありますか。名前はいいですから」
植松被告「思い出すのが………」
《植松被告は何かをいいかけたようだったが、歯切れが悪くなった。記憶を掘り起こそうとしたのだろうか。首をひねるような動作もしている。弁護側がすかさず、質問を続ける》
弁護人「いろいろな人の話とかが積み重なったということですか」
植松被告「はい」
弁護人「別の時間に改めて聞きますが、私は、3年前に(あなたが)ノートを渡したと言った。3年たった今でも(考えは)変わらないですか」
植松被告「はい」
弁護人「少しでも何か変化はありましたか」
植松被告「考えが深まりました。どうして、大麻を認めたほうがいいのか、どうして、安楽死を認めたほうがいいか、説明できるようになりました」
弁護人「拘置所で考えたということですね」
植松被告「はい」
《ここで弁護人が、植松被告が被告人質問を続けられるかどうか、体調を気遣うように声をかける》
弁護人「大丈夫ですか?」
《植松被告は背筋を伸ばしはっきりと『はい』と答えた。しかし、弁護側の申し入れで裁判長が休廷を宣言。植松被告は起立して裁判長に一礼し、証言台前の席に腰を下ろした。午後は1時15分から再開される》