今月25日付でNHKの会長に就任した前田晃伸(てるのぶ)氏が27日、就任会見に臨み、今年を「公共メディアとして、NHKの真価が問われる重要な1年になると思う。視聴者の意見に謙虚に耳を傾け、スピード感をもって対応し、期待と信頼にしっかりと応えていく」と抱負を述べた。
NHKは3月から、テレビ番組を放送と同時にインターネットにも流す常時同時配信の試行を始める。新サービスについて「時代の大きな変化に合わせながら、視聴者・国民が求める信頼できて役に立つ情報を届けていく。情報の社会的基盤の役割を果たしていくことが、公共メディアのNHKに求められている普遍的な役割と思う」と語った。
新サービスに関連してネット利用者から、テレビを持たないネットユーザーからも受信料を徴収しようとしているのではないかという懸念の声が出ているが、前田会長は「この先の環境変化を見てから考えるしかない。現時点でどうこうということではないと思う」と述べるにとどまった。
常時同時配信開始の前提として、民放や総務省から実行を求められている業務、受信料、ガバナンス(組織統治)の三位一体改革については、「不断に取り組まなければならない課題」と語った。
今夏の東京五輪・パラリンピックに向けては、「4K、8Kでの競技中継や中継映像のインターネット配信、新技術を活用したデジタルサービスなど、NHKの制作力、技術力を駆使して、最高水準の放送サービスを実施したいと考えている」と語った。
前田氏は東大法学部を卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)に入行。富士、第一勧業、日本興業の各銀行が統合してできた、みずほホールディングス(現みずほフィナンシャルグループ)の社長などを歴任。メガバンクの経営に携わった経験などが経営員会に評価され、上田良一前会長の後任として選出された。