在日ロシア通商代表部の幹部職員の求めに応じ、大手通信会社「ソフトバンク」の元社員が機密情報を持ち出したとされる事件で、元社員の荒木豊容疑者(48)=不正競争防止法違反容疑で逮捕=が警視庁公安部の調べに「最初は公開されている資料を求められ、渡した」と供述していることが27日、捜査関係者への取材で分かった。報酬として現金を受け取り、複数回にわたって資料などを渡した後、機密情報を漏洩(ろうえい)させたとみられる。
当初は機密性のない情報を求めて警戒心を解き、要求のレベルを高めるのはロシアのスパイ活動の常套(じょうとう)手段で、公安部はほかにも機密情報を漏洩させた疑いがあるとみて捜査する。
捜査関係者によると、幹部職員は当初、会社パンフレットなどに記載されているような情報の公開資料を要求し、報酬として現金を支払ったとされる。荒木容疑者は「この程度でお金をもらえるのならば、いいと思った。情報の内容によって報酬額は違った」という趣旨の説明をしている。
荒木容疑者は昨年2月18日、同社のサーバーにアクセスし、社外秘指定の通信設備関連の作業手順書などのデータを不正に持ち出した疑いで、今月25日に逮捕された。持ち出しから数日後には幹部職員に手渡していたとみられる。幹部職員からは電話番号やメールアドレスなどの連絡先は知らされておらず、会うたびにその場で次回の日程などを決めていたという。
公安部は27日、荒木容疑者を送検した。