【ロンドン=板東和正】世界保健機関(WHO)は30日、新型コロナウイルスによる肺炎を「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と宣言した。WHOはこれまで、緊急事態宣言を見送っていたが、新型肺炎の感染が世界各地に広がっていることを受け、検疫態勢の充実など感染拡大防止に向けた対応が急務と判断した。
緊急事態宣言は、昨年7月のコンゴ(旧ザイール)でのエボラ出血熱以来となる。宣言に法的強制力はないが、各国に空港などでの検疫強化や、医療機関での検査態勢整備といった対策を促す。
WHOは30日、スイス・ジュネーブで緊急委員会を開き、協議結果を踏まえてテドロスWHO事務局長が緊急事態宣言に相当すると判断した。テドロス氏は30日、宣言に踏み切った主な理由について、新型肺炎の感染が中国以外の国でも発生していることをあげた。感染拡大を防ぐために「一致団結して行動する時だ」と強調した。
緊急事態宣言をめぐっては、WHOは22、23日両日にも緊急委を開いたが、「まだ世界的な緊急事態にはなっておらず、時期尚早」として、見送っていた。
WHOの緊急事態宣言は、世界的な感染拡大の規模や致死率の高さなどを考慮して検討される。これまでに、2009年に新型として流行したインフルエンザや14年に感染拡大したポリオ(小児まひ)、16年の中南米でのジカ熱などでも出された。
一方、30日付のフランス紙ルモンドは中国政府がWHOに対し、緊急事態宣言を出さないよう圧力をかけたと報道。WHOがこれまで緊急事態宣言を見送ってきた背景に、中国政府の意向が働いていたとの見方も広がっている。
■WHO緊急事態宣言 各国に注意喚起と取り組み促すも強制力なし