英国が欧州連合(EU)からの離脱を果たした。長期の混迷は一応終結したが、解決すべき問題が残っている。
EUからの離脱劇に刺激され、スコットランドや北アイルランドの地方議会などで「英国からの独立」を求める声が高まっているのだ。
だが、世界の安定のためにも、英国の国家としての一体性は保たれている必要がある。
英国は、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドからなる連合王国だ。核兵器を保有し、国連安保理常任理事国を務める。先進7カ国(G7)の一員で米国と緊密な同盟関係にある。自由や民主主義を尊重する世界の秩序を担う、有数の主要国といえる。
スコットランドなどの分離独立論により「連合王国」が解体に動き出せば、経済面の混乱はもとより、英国の影響力低下は必至だ。覇権志向の中国やロシアに結束して対処する上でも、英国を地盤沈下させてはならない。
ジョンソン英首相はEU離脱に伴う演説で「連合王国全ての向上を図りたい」と強調した。
2016年の国民投票ではスコットランドと北アイルランドがEU残留を、イングランドとウェールズは離脱を支持した経緯がある。スコットランドでは昨年12月の英総選挙で、分離独立を掲げるスコットランド民族党(SNP)が8割を超える議席を獲得し、独立論が再燃している。
SNPは14年住民投票での分離独立否決でもあきらめず、再度の住民投票を目指している。実現には英議会の認可が必要で、現時点でその見通しは立っていない。
だが、EU離脱でスコットランド経済が打撃を受ける可能性がある。EU復帰のための分離独立論が英国を揺るがし続ける恐れがある。関税の扱いで英本土と一線を画された北アイルランドもアイルランドとの統一機運が高まりかねない。両地域の経済状況などにも配慮しつつ、「連合王国」の動揺や崩壊を防ぐ必要がある。
ジョンソン首相は、EUとの自由貿易協定(FTA)締結交渉を進めるが、重要なパートナーと位置づける日本とのEPAを早期に策定したい考えだ。
日本は英国と自由や民主主義、人権、法の支配などの普遍的価値を共有している。日英協力関係を一層深めていくべき時である。