【ジュネーブ=板東和正】世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスによる肺炎をめぐる専門家会合で台湾の参加を認めたのは、WHOが台湾を排除しているとの国際的な批判を和らげる狙いとみられる。テドロスWHO事務局長が新型肺炎の対応で中国を擁護する姿勢を貫くことにWHO内部からも疑問の声が上がる中、混乱を回避しようとした可能性が高い。
「(台湾の専門家も)会合の議論に等しく貢献すると確信している」
WHOで緊急事態への対応を統括するマイク・ライアン氏は8日の記者会見でそう話し、台湾の参加を歓迎した。
中国の反対によりWHO年次総会へのオブザーバー参加が認められない状態がここ数年続いている台湾は、多くの専門家会合にも参加できていない。昨年、台湾が専門家会合に参加を申請したうち、7割近くはWHOに出席を拒否された。
WHOが今回、台湾の出席を受け入れる姿勢を見せたのには、3~8日の34カ国の理事で構成される執行理事会で、日米などの加盟国から台湾排除について批判を浴びた背景がある。理事会では、米国がWHOと台湾の連携を呼び掛け、日本なども台湾のWHO参加に支持を表明。台湾の蔡英文総統が8日、ツイッターで日米などに謝意を伝え、「病に国境はない」と訴えていた。
一方、テドロス氏の中国寄りの姿勢に異議を唱えるWHO幹部の存在が、出席を認める決断に影響したとの見方もある。
WHOの緊急委員会のメンバーの一人は5日、英紙フィナンシャル・タイムズの取材に応じ、新型肺炎をめぐる中国の初動対応の遅れを指摘。中国によるWHOへの報告が遅れ、緊急委員会のメンバーが感染のケースの多くを把握できていなかったと明かした。