【三井美奈の国際情報ファイル】崩れ始めたマクロン新党 大統領再選のシナリオに不安






 フランスで、2年後の再選を目指すマクロン大統領のシナリオに黄信号がともっている。3月の統一地方選に向けて、政権の大番頭、フィリップ首相が突然、出馬を表明。盤石だった陣営が揺らぎ始めた。

 フランスは昨年末以来、政権が進める「年金制度改革」で、抗議デモとストの嵐だ。首都パリは1月半ばまで2カ月間、地下鉄やバスが止まり、全市がマヒ状態に陥った。2月はごみ処理施設のストが続き、未回収ごみが街中にあふれる。

 マクロン氏は年金改革について「公約だから」とするだけで、国民向けに何も発言しなかった。イラン問題、欧州安保など外交には熱心だが、内政は首相に対応を任せきり。デモ隊は「マクロン逃げるな」の大合唱で、大統領夫妻が観劇中の劇場に押し入るなど、憎悪をたぎらせる。世論調査では69%が「再選はない」と答えた。

 フィリップ首相の出馬表明は、こんな殺伐とした状況で飛び出した。1月末、北西部ルアーブルの市長候補として名乗りをあげた。当然、国民には「マクロン離れ」の象徴と映る。

 閣僚と地方首長の兼職を禁じる法はないが、一国を背負う首相としてはあまりにも奇怪だ。そもそも、政府は汚職追放のため「兼職自粛」を掲げ、首相はその張本人である。

 首相は49歳。将来は大統領も見込めるはずだが、このところひげに白いものが目立っている。地元紙に「選挙で勝っても首相を続け、現市長に市政を委ねる」と述べた。ルアーブルは人口17万で、首相はかつてここで市長を務めていた。首相退任後の就職先を確保したいという虫のいい計画だ。

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