ワクチン開発「18カ月」に高いハードル 新型肺炎





12日、スイス・ジュネーブで会見する世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長(AP)

 【ジュネーブ=板東和正】世界保健機関(WHO)は専門家会合で各国と新型コロナウイルスの研究情報を共有し、ワクチンの開発に向けた一歩を踏み出した。ただ、実用化には副作用の検証など多くのステップを踏む必要があり、会合を通じ言及された「18カ月」での製造には困難が予想される。新型肺炎が「パンデミック(世界的大流行)」に陥る恐れも指摘される中、早期にワクチンを開発できるかが鍵になりそうだ。

 「世界の研究者が新型肺炎の課題に取り組むエネルギーに触れることができ、勇気づけられた」

 WHOのテドロス事務局長は12日、専門家会合後の記者会見でそう語った。

 テドロス氏は11日には、新型肺炎の最初のワクチンが「18カ月以内に準備できる可能性がある」と指摘した。WHO関係者によると、各国のウイルス学や疫学の専門家、製薬会社の関係者らが集結した同会合では、新型肺炎の感染源の調査やワクチンの臨床試験などの計画が立てられたという。テドロス氏は会合でワクチン開発に向けた手応えを感じたとみられる。

 ただ、一般的にワクチンの開発には数年はかかるといわれる。しかも、新型肺炎のような呼吸器系のウイルスの発症を完全に防ぐワクチンは開発が難しいとされ、「『18カ月』はハードルが高い」(専門家)。事実、2002~03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)や、中東地域で発生している中東呼吸器症候群(MERS)のワクチンはいまだに完成していないという。WHOは時間短縮のため、開発中のMERSのワクチンのノウハウを生かして新型肺炎のワクチンを作成することも検討しているが、早期実用化につながるかは不透明だ。

 テドロス氏は12日、「(新型肺炎は)どの方向にも進行する可能性がある」と話し、世界各地の感染拡大に警戒を示した。新型肺炎を予防するワクチンの開発は一刻を争う状況だ。



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