韓国観光地を揺るがす「怪情報」:風評被害の実態と経済的影響

近年、SNSを中心に韓国国内の主要観光地を巡る根拠のない情報やデマが拡散し、各地で深刻な風評被害と観光客離れが進行している。この「怪情報」の蔓延は、観光業界に甚大な経済的打撃を与え、地方自治体や韓国観光公社もその収拾に追われる事態となっている。特に国内旅行需要の低迷が続く中、これらの否定的なイメージが観光市場全体の縮小を加速させている。

SNSで拡散する誤情報と各地の被害事例

問題となっている怪情報は、SNSやオンラインコミュニティを通じて急速に広まり、実態と異なる地域の印象を形成している。

襄陽の「遊興の聖地」化:SNSでの誤情報拡散

江原道襄陽は、近年サーフィンやグルメで人気の観光地として注目を集めていた。しかし、「襄陽は遊興の聖地」といった根拠のない書き込みがSNS上で相次ぎ、実態とは異なるネガティブなイメージが拡散している。これに対し、襄陽郡は虚偽情報を流した投稿者の告発に踏み切ったが、関連する書き込みは依然として続いている状況だ。

江華郡に広がる「放射能」の噂:自治体と漁業者の緊急対応

仁川・江華郡では、「北朝鮮が放射能を流した」という衝撃的な噂が広まり、「放射能の街」として風評被害に苦しんだ。発端は、ある動画投稿者が「江華の海から基準値を超える放射能が検出された」と主張する動画を公開したことによる。この事態を受け、地元自治体は漁業関係者と緊急会合を開催し、事態の沈静化を図る必要に迫られた。

済州島「中国に買われた」説:根強い不安と事実関係

済州島では、観光地・牛島の浜辺に中国国旗が掲げられた写真がオンラインで出回り、「済州島が中国に買われた」という誤った情報が広まった。済州道は「中国人による土地の所有割合は全体の0.5%にすぎない」と公式に否定したが、一度抱かれた不安は根強く、観光客の心理に影響を与え続けている。

韓国の人気観光地、美しい海岸線とビーチの風景韓国の人気観光地、美しい海岸線とビーチの風景

観光業界への深刻な打撃と国内観光市場の低迷

これらの怪情報や風評被害は、韓国の観光業に甚大な影響を与えている。特に高齢者の団体観光では、一度に50人規模のキャンセルが発生するケースも報告されている。済州の旅行会社の代表は、「中国人観光客が増えたという噂が出てから、国内からの訪問客が明らかに減った」と語り、風評が直接的な観光客減少につながっている現状を指摘している。

一度ネガティブなイメージが定着すると、その払拭には多額の費用と長い時間が必要となる。全羅南道麗水もその典型的な例で、「ぼったくり料金」「不親切」といった評価が定着した結果、かつて1500万人以上が訪れていた観光客数が、2023年には1000万人台にまで落ち込んだ。

韓国国内の観光市場は現在、全体的に低迷が続いている。海外旅行需要の高まりに加え、このような地域観光に対する否定的な認識が広がることで、団体観光・個人旅行(FIT)ともに縮小傾向にある。韓国観光公社によれば、2025年6月までの国内観光消費額は19兆1104億ウォンで、前年同期比で4.0%減少。済州島の内国人観光客数も1187万人と、前年より6.2%減少しており、問題の深刻さが浮き彫りになっている。

まとめ

韓国の観光地を揺るがす「怪情報」の拡散は、各地の観光業に深刻な風評被害をもたらし、観光客数の減少と経済的損失を招いている。一度定着したネガティブなイメージの払拭は困難であり、国内観光市場全体の低迷と相まって、韓国の地域観光は厳しい局面を迎えている。地方自治体や観光関連機関による正確な情報発信と、風評被害対策の強化が喫緊の課題となっている。

参考文献