肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、中国当局の初動の遅さを指摘する声が世界で高まる中、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が中国を擁護し続けている。テドロス氏が中国寄りの発言を続ける背景には、長年にわたる中国とWHOの「蜜月の仲」があるとされる。(ジュネーブ 板東和正)
■「何が悪い」
「中国のしたことを認めて何が悪いのか」
テドロス氏は12日、新型肺炎の治療法やワクチンについて話し合う専門家会合後の記者会見で語気を強めた。
事の発端は、会場の記者が「WHOは、中国の対応を称賛するように中国から圧力を受けたのか」とテドロス氏に批判的な質問をぶつけたことだ。
質問を聞いたテドロス氏はこわばった表情で、「中国は感染の拡大を遅らせるために多くの良いことをしている」と説明。「ほとんどすべての加盟国が、中国の対応を評価している」と言い切った。
テドロス氏はさらに、中国の習近平国家主席について、「知識を持っており、危機に対応するリーダーシップを発揮している」と語り、称賛を繰り返した。
これまで、テドロス氏は新型ウイルスの問題で、一貫して中国の肩を持つような発言を続けてきた。
中国外務省によると、テドロス氏が1月28日に習氏と会談した際も「(中国は)時宜にかなった有力な措置を講じている」と対応を評価した。WHOが同月30日に、感染拡大を受けて「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言したときは、「WHOは(新型肺炎の)発生を制御する中国の能力を確信している」と習氏をたたえた。