新型肺炎「カンボジアルート」の感染拡大に懸念 クルーズ船下船者が発症






 【シンガポール=森浩】新型コロナウイルスに感染した疑いのある乗客がいるとして日本などが入港を拒否したクルーズ船「ウエステルダム」をめぐり、感染確認が不十分なまま下船を認めたカンボジアの対応に批判の声が上がっている。下船者に感染が確認されたためだ。地元衛生当局は国内に残る乗客にウイルス検査を行う予定だが、既に他の乗客は世界に拡散。「カンボジアルート」での感染拡大が懸念される。

 1日に香港を出発したウエステルダムは日本やフィリピン、タイなどが受け入れを拒否したが、親中国的なフン・セン首相が「憎むべきは病気そのものではなく、蔓延(まんえん)する差別だ」として入港を許可。乗客乗員約2300人のうち、体調不良を訴えた約20人のウイルス検査の結果が陰性だったため下船が許可された。

 日本がクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」からの下船に慎重だったことに対し、カンボジアの対応を称賛する声が上がった。米国人が600人以上乗船しており、トランプ米大統領は「好意を忘れない」とツイートし、カンボジアに謝意を表明。フン・セン氏は14日、港に自ら出向き、マスクなしで握手を交わして乗客を迎えた。

 しかし、翌15日にマレーシアに移動した乗客の米国人女性(83)の感染が確認され、事態は一変した。カンボジアはマレーシアに再検査を要求したが、結果は変わらず陽性。「感染者はいない」との前提で下船を進めたカンボジアはメンツがつぶされた格好だ。

 カンボジア保健省は下船者に「世界保健機関(WHO)とも連携した独自の健康確認をした」と説明したが、どのような方法で確認したかは分かっていない。

 既にウエステルダムからは1200人以上が下船した。米紙ニューヨーク・タイムズは、ウイルス拡散を封じ込める最善の方法は「全乗客を追跡し、2週間隔離すること」と指摘。ただ、「既に困難だ」と付け加えた。フン・セン氏は乗客に世界遺産アンコールワットなどの国内観光を勧めたこともあり、国内で感染が拡大した可能性もある。

 カンボジアには昨年、200万人の中国人が訪れたが、ウイルス流行を受けても中国への配慮から入国制限をせず、「脅威を軽視している」(AP通信)と指摘される。17日までに国内からは1人しか感染者が確認されておらず、地元ジャーナリストは検査体制や方法を疑問視する。

 一方、ウエステルダムからカンボジアで下船した日本人乗客4人は18日、感染していないことが確認され、同日早朝に成田空港に到着した。再検査を受けているという。茂木敏充外相が同日の記者会見で明らかにした。



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