【主張】中国の全人代延期 訪日中止で対策に当たれ


 中国・武漢で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の拡大を受けて、3月5日開幕予定だった中国の全国人民代表大会(全人代)が延期される見通しとなった。

 全人代は、共産党独裁を正当化するための疑似議会機関で、3月5日開幕が通例だった。中国全土から約3千人の代表らが集まる。感染拡大のリスクを考えれば、延期は当然である。

 習近平国家主席率いる中国指導部の新型肺炎に対する初動の過ちが招いた異例の事態といえる。

 中国の感染者数は7万2千人を超えた。厳しい言論統制をしている中国だが、習指導部や中央、地方政府の対応のまずさへの不満は広がっている。

 共産党理論誌は15日、習氏の演説を掲載する形で、習氏が1月7日の時点で新型肺炎へ対策を要求したと伝えた。当時そのような発表はなく、初耳の話である。極めて疑わしい。

 民衆や共産党内に生まれた習氏への批判、不満をかわしたいのだろう。湖北省や武漢市の地方指導者を解任したことも、トカゲの尻尾切りのようである。

 習指導部が今、取り組むべきは姑息(こそく)な責任回避ではない。世界と協力して、感染阻止にあたることである。

 王毅国務委員兼外相はミュンヘン安全保障会議で演説し「(新型肺炎への)対応の迅速さと規模、有効性は中国の(政治)体制の優位性を示している」と胸を張った。強がりの発言をしてむなしくないか。謙虚に世界の支援を仰いだらどうか。

 中国は、世界保健機関(WHO)の専門家チームを北京に受け入れたものの、米政府が打診した米疾病対策センター(CDC)の専門家派遣は拒んでいる。米政府高官が「中国の対応は透明性を欠いている」と失望感をあらわにしたのはもっともだ。

 王氏は「中国は世界の公衆衛生に多大な努力を払った」と語った。ならば主要国からの専門家派遣も受け入れるべきだろう。

 ミュンヘンでの日中外相会談は習氏の4月の国賓訪日の準備継続で一致したが、訪日は中止すべきだ。日本も国内流行への備えに全力を尽くすときで綿密な準備協議をする暇などない。習氏は外交で求心力を取り戻したいのかもしれないが、それよりも感染拡大阻止に専念すべきときである。



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