政府の新型コロナウイルス感染症対策本部は25日、対策の基本方針をまとめた。
同本部の専門家会議は「これから1~2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際となる」と、警鐘を鳴らしている。
感染が急拡大すれば地域の医療提供体制が破綻しかねない。社会や経済の混乱が深刻化する。あらゆる方法で患者増の速度を抑えねばならない。
新型肺炎の流行自体は防げなくなり、その規模をできるだけ抑え、早期に収束させたいとの方針に転じざるを得なくなったということだ。
基本方針は、企業や団体に、時差出勤やテレワークの実施を求め、発熱など風邪症状のある人の休暇取得を促した。患者の集団が発生した自治体の支援や、地域の医療体制の整備を盛り込んだ。
それぞれの項目は急ぎ、確実に実施されるべきだ。関係者・団体の協力が必要である。
だが、政府が今後1~2週間が瀬戸際としている割には、基本方針は不十分である。危機管理で忌むべき「戦力(対策)の逐次投入」の感がぬぐえない。
まず、現状の出入国管理や渡航中止勧告を「引き続き実施する」とした点だ。日本は中国・湖北、浙江両省からの入国制限をしている。中国全土を対象とする国が増え、日本は中国人が14日間あまり過ごしてから海外へ出かける「中継地」になっているとの指摘もある。今のままでいいのか。
検査態勢も不安が募る。医師が病名を判断して投薬したり、患者が他の人にうつさないよう意識付けをしたりする上で、検査は重要だ。しかし検査態勢は整っていない。基本方針は「検査機能の向上を図る」としただけで、目標値や見通しを示さなかった。
イベント開催の是非については基準を示さず、主催者に判断を丸投げした。これでは困惑が広がるばかりだ。学校の臨時休校は、都道府県から学校設置者へ要請するとして国の関与を避け、知事から不満の声が出ている。
政府の対応に統一した強い意思が感じられない。基本方針の記者会見は対策本部副本部長の加藤勝信厚生労働相が行った。だが、本部長の安倍晋三首相も会見し国民に協力を呼びかけたらよかった。それが危機における国政の最高責任者のとるべき行動である。