公取委、送料無料に「待った」 楽天は強行の構えで批判も





公正取引委員会が立ち入り検査に入った楽天本社=東京都世田谷区(佐藤徳昭撮影)

 楽天のネット通販サイトでの「送料無料」の方針に公正取引委員会が待ったをかけた。ネット通販をめぐる競争が激化する中、競合他社に対抗するのが狙いだったが、出店者に送料の変更を押し付ける三木谷浩史会長兼社長の手法が強引だったとして、クギを刺された格好だ。だが、それでも楽天は予定通り3月18日に送料無料を強行する考えで、三木谷氏への批判の声が高まりそうだ。

 楽天の送料無料化方針を独占禁止法違反の疑いで調査している公正取引委員会は28日、東京地裁に緊急停止命令の申し立てを行った。違反行為を取りやめるように命じる排除措置命令が出るまで、無料化を始めないという決定を求めた。緊急停止命令の申し立ては16年ぶり。

 楽天が送料無料に動く背景には、ネット通販でトップを争うアマゾンの存在がある。アマゾンは独自の流通網を持ち、多くの商品を自社で仕入れて販売しており、2千円以上の購入や会費を払えば送料を無料とし売り上げを伸ばしている。

 一方で、モール(仮想商店街)として発展した楽天市場は出店者が配送を担い、送料も各出店者が独自に設定する方式だ。だが、利用者には送料が「分かりにくい」「高い」などの不満もある。三木谷氏は送料無料で利便性を高め、「店舗の売り上げは十数%伸びる」と強気な見通しを示すが、送料を負担する出品者側からの不満が噴出した。

 三木谷氏のやり方には拙速感が否めない。出店者5万店には中小事業者も多く楽天の集客力に依存しており、ルール変更に出店者が対抗するのは難しい。それだけに負担を一方的に押し付けるのではなく、広く理解を得られるようにもっと知恵を絞る必要があった。

 公取委の判断を受けてもなお、送料無料を実行したいのであれば、物流機能を持ってサービスを向上するアマゾン型のモデルへの転換が欠かせない。実際、楽天は10年間で2千億円を投じ、物流網を強化する方針を示す。だが、現状では物流網の人口カバー率は約6割にとどまっており、整備には時間がかかりそうだ。

 楽天は4月に自前の通信網を使った携帯電話事業に参入する。利用者との接点を増やし、ネット上で通販や決済、旅行などグループの多様なサービスを回遊させる「経済圏」の相乗効果を高める方針だ。携帯事業は先行投資が重いため、当面は金融とネット通販事業で収益を下支えする計画だが、ネット通販は収益性が頭打ち傾向。送料無料でてこ入れを狙ったが、先行きは見通せなくなっている。(万福博之)



Source link