【ソウル＝桜井紀雄】北朝鮮の金正恩（キム・ジョンウン）朝鮮労働党委員長は２９日までに、党政治局拡大会議を開き、新型コロナウイルスが流入し得る経路の「完全封鎖」と、国家的危機管理に関する法整備を急ぐよう指示した。会議では、党幹部らの官僚主義や不正・腐敗も厳しく批判され、政権中枢幹部である李万建（リ・マンゴン）、朴泰徳（パク・テドク）両党副委員長が解任された。朝鮮中央通信が２９日に報じた。
北朝鮮は、中国で新型肺炎が広がって以降、中国との国境を事実上、封鎖するほどの防疫体制をとり、食堂での会食さえ禁じるなど統制を強めている。感染者はいないと繰り返し主張しているものの、経済に与える打撃は小さくないとみられ、緩みに対する厳罰を強調することで、体制の引き締めを図ったもようだ。
金氏が２８日に朝鮮人民軍が東部の前線で行った合同打撃訓練を視察したことも報じられた。新型ウイルスに備えて政治的活動が縮小する中でも国防体制に抜かりはないと誇示する狙いとみられる。金氏の動静報道は約２週間ぶり。
会議では、ウイルスの蔓延（まんえん）を防ぐための「超特級防疫措置」を徹底的に講じることなどが討議された。金氏は「わが国に流入した場合の結果は深刻だろう」と述べ、強い危機感を示した。また、党幹部養成機関で「重大な不正・腐敗現象が起きた」ことが糾弾され、機関の指導組織の解散と幹部らの処罰が決まったという。
