【シンガポール=森浩、ワシントン=黒瀬悦成】アフガニスタンをめぐる米国とイスラム原理主義勢力タリバンによる和平が29日、カタールの首都ドーハで合意され、両者は文書に署名した。2001年から続く「米国史上最長の戦争」は終結に前進。トランプ米大統領は11月の大統領選を前に外交的成果を得る格好だが、今後のタリバンとアフガン政府の交渉は難航が予想され、国内はさらなる混迷に陥りかねない。
ロイター通信が報じた米政府とアフガン政府の共同声明によると、米国は合意から135日以内に現在約1万3千人規模の駐留米軍を約8600人規模に削減。タリバンが合意事項を順守すれば、14カ月以内に米軍と北大西洋条約機構(NATO)軍はアフガンから完全に撤収する。
米国は8月までにタリバン幹部らに科している制裁の解除を目指す。タリバン側はアフガン国土をテロの温床としないことを確約する内容とみられる。
ドーハで開かれた署名式典には米国からはポンペオ国務長官が、タリバンからは米国との交渉相手だったバラダル幹部らが出席した。式典でポンペオ氏は、タリバンは国際テロ組織アルカーイダとの関係を遮断すると表明。「タリバンが合意を順守するか注視する」と話した。
合意を受け、タリバンはアフガン政府や国内勢力の代表らと10日にも協議を始める見通し。タリバン最高指導者のアクンザダ師は29日、構成員に合意を順守するよう呼び掛けた。
米・政府軍とタリバンは2月22日から和平の前提となる7日間の「暴力の削減」を実施した。アフガン地元メディアによると、22日以降もタリバンは政府施設などへの攻撃を続け、市民や警察官ら少なくとも計23人が死亡。だが、米軍など外国部隊に被害はなく、米国やアフガン政府は暴力の削減はおおむね達成されたと判断した。