千葉県野田市で昨年1月、小学4年の栗原心愛(みあ)さん=当時(10)=を虐待して死亡させたとして、傷害致死罪などに問われた父親の勇一郎被告(42)の裁判員裁判第7回公判が4日、千葉地裁(前田巌裁判長)であり、精神科医で臨床心理士の小西聖子武蔵野大教授と、心愛さんの祖母に当たる被告の母親の証人尋問が行われた。主な内容は次の通り。
【心愛さんの心理】
小西教授 小学校のアンケートで「お父さんからぼう力を受けています」と虐待を訴えることができた平成29年11月当時の心愛さんは、虐待を受けた子供の中では力があると思う。それは、父親と同居していない時期が長く、虐待が始まって間もなかったため、おかしいと考えられたからなのではないか。
心愛さんが亡くなる直前の31年1月5日の動画には、心愛さんが「ママ、ママ」と繰り返し母親に助けを求めるものの、母親に拒否される様子が映っている。これは母親が、父親がいない場面では味方をしていたことが影響していたのではないか。父親に対しては畏怖し、絶望や無力感を感じている。
【母親の心理】
小西教授 心愛さんにアンケートの内容を否定する嘘の手紙を書かせたり、父親の虐待に同調したりする様子がみられる。これは夫からの支配という目先の恐怖に対応するため、心愛さんに対する影響を考えられなかったためではないか。DV(ドメスティック・バイオレンス)の被害者にはよく見られる傾向だ。
【虐待動画】
小西教授 父親が心愛さんを虐待する動画が残っていた。専門ではないが、虐待の加害者がこういった動画を撮影するのは、自己愛的な性格が根底にあり、子供のちょっとした言動も自分を脅かすものと考えていたからではないか。
【被告の更生】
被告の母親 息子には何があったのか、真実を話してほしい。話次第ではあるが、親子の縁を切らず、刑務所に面会に行き、更生するよう支えていきたい。