【ワシントン=住井亨介】米西部カリフォルニア州沖で乗員・乗客に新型コロナウイルスの感染症状が出ていることが明らかになったクルーズ船「グランド・プリンセス」への対応をめぐり、米国土安全保障省の高官は5日、上院委員会の公聴会で、すべての乗員を隔離収容する施設がないことを明らかにした。
グランド・プリンセスは横浜港で集団感染が発覚した「ダイヤモンド・プリンセス」と同じ米船会社「プリンセス・クルーズ」が保有している。米紙ワシントン・ポスト(電子版)などによると、グランド・プリンセスの乗客は約2500人で、乗員・乗客約20人が感染が疑われる症状を訴えている。
公聴会では「(検査で)陽性反応が出れば、全員を一緒に乗船させておくのは適切ではない」(ハッサン上院議員)などと懸念が噴出した。これに対し、国土安全保障省のケネス・クチネリ副長官は「一度に検疫を行う能力に誤解がある」と述べ、設備対応には限界があると訴えた。
グランド・プリンセスはハワイへのクルーズ中だったが、予定を変更して帰港のためサンフランシスコに向かっている。米CNNテレビ(電子版)によると、同船にはヘリコプターで運ばれた検査キットと米疾病対策センター(CDC)の担当者が下ろされた。CDCの指示でカジノが閉鎖されるなど人が集まる催しが中止されているという。
「ダイヤモンド・プリンセス」のケースでは船内での感染拡大を防げず、米国内でも批判が起きたこともあり、米当局は難しい対応を迫られそうだ。