感染拡大…対ロシア外交もストップ 安倍首相の戦勝式典出席に暗雲 





茂木外相(右)とロシアのラブロフ外相=2月15日、ドイツ・ミュンヘン(外務省提供)

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が日本の対露外交にも影響を及ぼし始めている。北方領土問題の解決を目指す平和条約締結交渉は、外務次官級協議が開かれず、3月中とみられた茂木敏充、ラブロフ両外相の会談も日程が決まっていない。このまま収束の兆しが見えなければ、5月にモスクワで開かれる対独戦勝記念式典への安倍晋三首相の出席も厳しくなる。

 「次官級協議もラブロフ外相との会談も、できるだけ早く調整できればと思っている」

 茂木氏は10日の記者会見で、平和条約締結に向けた協議や交渉の日程調整を急ぐ考えを示した。

 ドイツ・ミュンヘンでの2月15日(日本時間16日)の外相会談では、ラブロフ氏の早期来日を調整することで一致した。平和条約の議論を整理するため、速やかに次官級協議を開催することも確認した。

 しかし、中国・武漢発の新型コロナウイルスの感染が国境を越えて広がる中、ロシアのモルグロフ外務次官が国内の感染防止対応に追われ、「平和条約の協議どころではない」(日露外交筋)状態とされる。そのため、森健良(たけお)外務審議官との次官級協議は開催の見通しが立たず、3月下旬が想定されたラブロフ氏来日も、調整が滞っている。

 安倍首相が5月9日の対独戦勝記念式典に出席の方向で検討を進めているのは、昨年9月以来となるプーチン大統領との会談を行うためだ。2018(平成30)年11月にプーチン氏と合意した交渉加速化の機運をしぼませたくないとの思いが背景にある。

 ただ、事前に外相会談や次官級協議で領土問題解決に向けた議論を詰められなければ、形式だけの首脳会談になりかねない。「首相の訪露は、首脳会談でどういう成果を挙げられるかが大きな判断要素の一つ」(外務省幹部)となる。



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