仏大統領「とにかく家にいろ」 現地紙も嘆く薄い市民の危機感



 フランスのマクロン大統領(ロイター)
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 【パリ=三井美奈】新型コロナウイルス感染が広がる中、フランス政府は20日、外出制限の取り締まり強化を宣言した。マクロン大統領は「危機はまだ始まったばかりだ」と警告。禁止令が出ても外出を止めない国民に不満を示し、「家にいろ」キャンペーンを展開している。

 20日、全国の鉄道駅で一斉検問が始まった。鉄道に乗る人は全員、警察に理由を示す証明書の提示を求められる。パリのサンラザール駅前には、30人以上の列ができた。付近では警察官が騎乗で巡回警備する。

 パリ警視庁は、週末に市民が行楽に出かけるのを警戒。声明で「いまはバカンス中ではない。なのに、まだ出歩いている人がいる」と戒め、セーヌ河岸やエッフェル塔前広場など、各地の遊歩道の立ち入りを禁止すると発表した。政府は「命を救え 家にいなさい」の標語を広げている。


20日、パリのスーパーのレジ前。1メートル間隔で並ぶよう、床に客の立ち位置が示されている(三井美奈撮影)
20日、パリのスーパーのレジ前。1メートル間隔で並ぶよう、床に客の立ち位置が示されている(三井美奈撮影)
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■大統領、キレる?

 大統領は19日、病院を視察した際、外出禁止令が出たのに公園に出かけ、屋外マルシェ(市場)に詰めかけている人がいると指摘し、「みんな事態を軽く考えている。責任感を持つべきだ」と述べた。取り締まり強化により、国民への「ショック療法」が必要と判断したもようだ。

 17日に施行された外出禁止令は、(1)仕事(2)近場での生活必需品の購入(3)短時間の運動-のための外出を「例外」として容認した。外出時は、いずれかの理由を記した証明書を携帯せねばならない。

 だが、春らしい陽気が続く中、「例外」を拡大解釈して出歩く人が続出。20日付仏紙パリジャンは、ジョギングの人でにぎわうセーヌ河岸の写真を一面に掲載。「これが自宅にいることか?」の見出しで、市民の責任感の欠如を嘆いた。

■マスクの反乱

 政府が危機感を強めるのも、各地の病院の集中治療室で、すでに人手や物資が不足し始めたからだ。

 アルザス地方では20日、病床確保のため、野戦病院の設営作業が始まった。18日には、軍用機が患者6人を他地域に移送した。レンヌ大などの調査は、蘇生治療の体制が整わなければ、「最悪の場合、4月半ばまでに国内で1万1千人以上が死亡する」と指摘。大統領への公開書簡で、「中国を見習って、外出禁止を徹底して欲しい」と求めた医師団体もある。

 政府は検問のため、全国で10万人の警察官を動員するが、防護用のマスクや手袋は支給されないまま。警察官の労働組合は「これでは自分の身が守れない」と反発している。郵便局では「安全策が取れていない」として職員が任務を放棄する動きが広がり、21日には人員不足から全国の郵便局が業務を中止した。



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