【日本の議論】日本版ライドシェアの是非 「運転手不足を補う」「世界的に規制の方向」

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米西部アリゾナ州の空港にあるライドシェア乗車場で待機する車両=2019年12月(AP)

米西部アリゾナ州の空港にあるライドシェア乗車場で待機する車両=2019年12月(AP)

 欧米や東南アジア各国で普及している自家用車の相乗り「ライドシェア」が、注目を集めている。1月に経済同友会が「日本版」の実現を求める提言を発表したのがきっかけだ。ただ、日本ではタクシー会社の反発が強い。日本版ライドシェア実現の是非について、経済同友会規制・制度改革委員会の間下直晃委員長とタクシー大手、日本交通の川鍋一朗会長に聞いた。(大坪玲央)

間下氏「運転手の不足補う手段」

 --1月に日本版ライドシェアの実現を求める提言を発表した

 「タクシー会社が(タクシーなどの旅客運送が可能になる)第2種運転免許を持っていない一般の人を運転手として活用し、通勤時間帯に限定した自家用車による旅客運送を解禁すべきだというものだ」

 --なぜこのタイミングで発表したのか

 「今のタイミングしかだめということではない。ただ、今、タクシーが朝につかまらないのは、運転手不足で需給バランスが崩れているからだ。そして、東京五輪を控えていることや、高齢者の免許返納の動きが進んでいること、新型コロナウイルス感染拡大の影響を除けば、訪日客は増加傾向にある。運転手の需要が増える社会的な状況があるので提言した」

 --タクシー会社からライドシェアは風当たりが強い

 「海外ではライドシェアは既存のタクシー会社に対する『ディスラプター(破壊者)』で、良くなった部分もあるが問題点もある。日本では壊すのではなく、日本に合ったライドシェア制度をつくれば問題ない。そもそもライドシェアを十把ひとからげで敵視する必要はない。国土交通省もライドシェアというだけで(議論の)シャッターを閉めるが、おかしい。提言のタイトルにライドシェアを付けないというアイデアもあったが、それでは注目されていなかったと思う」

 --ライドシェアの良い点や問題点は

 「在住するシンガポールではかつては雨が降ると混雑してタクシーに乗れなかったが、ライドシェアのおかげで乗れないことはなくなった。ただ、タクシー事業者の経営悪化や、フルタイムでライドシェアを営む運転手が増えて競争激化が起きたことで、運転手の所得水準が低下したという問題は起きている」

 --日本版ライドシェアではどう解決するか

 「タクシー会社が、タクシー運転手を優先活用し、不足すればパートタイムでライドシェアのドライバーを活用するのがポイントだ。タクシー会社も収益が増えるし、お客も乗れないことがなくなる。ライドシェア運転手の収益にもつながる。パートタイムなので運転手の過当競争も起きにくい。『三方良し』だ」

 --ライドシェア実現のためにどう働きかけるか

 「国交省に説明したいし、規制改革推進会議や未来投資会議で議論を進めてもらいたいと思っている。実現に手を挙げそうな会社には(規制を一時凍結するなどの)『サンドボックス制度』による実験を支援したい」

 ました・なおあき 昭和52年、東京都出身。慶応大大学院修了。平成10年にブイキューブインターネット(現ブイキューブ)を設立し、以来、社長を務める。22年に経済同友会に入会、31年から現職。

川鍋氏「世界的には規制の方向」

 --経済同友会の日本版ライドシェア実現の提言をどう受け止めるか

 「ライドシェアはわれわれとしてはもう議論は終わっていると考えている。過去に規制改革推進会議で議論してきた。米国や東南アジア、中国などで普及が進んだライドシェアは現在、各国で規制の方向に向かっている。そういう状況の今、ライドシェア実現を言い出すのはどういうことなのか」

 --ライドシェアはなぜ規制に向かっているのか

 「主に3つの問題点があるからだ。1つ目は運転手個人が運行責任を負うので運行管理主体がないこと。2つ目は最低賃金など労働者の権利がないがしろにされがちということ。3つ目は、米国や中国などで、運転手による性的暴行や殺人などの犯罪が起きてしまっているという危険な現実があることだ」

 --朝方にタクシー供給が足りないのは事実。経済同友会の提言はそれを踏まえたものだ

 「(経済同友会は)雨の日にタクシーを呼んでも来ないが、ライドシェアであれば来るとメリットを強調しているが、議論が片面過ぎるのではないか。例えば、昼食の時間帯に人気の飲食店に行くと待つのが当たり前だが、お客が『待ちたくない』というのに対応するためにピークの昼食時に合わせて客席を増やせば、普段はガラガラになりコストがかかる。ライドシェアもこれと同じで、『すぐに乗りたい』というお客に対応するためには、低賃金の運転手がたくさん待機しなければならないということだ」

 --消費者にはメリットもある

 「ライドシェアの会社や消費者は良い思いをしても、労働者が低賃金で苦しい思いをしているなら、『三方良し』ではない。労働者側の視点でも考えなければ、サステナブル(持続可能)ではない。繁忙期に乗れないからタクシーは悪だとするのは一方的過ぎる」

 --東京五輪でタクシー混雑も予想される中、タクシー会社として供給を増やすために何ができるか

 「今、タクシーが供給力確保に向けてやれることを全てやっているかというと、恥ずかしい話だが、できているとはいえないと思っている。五輪の際に勢いをつけて、できる限りさまざまな施策を試験的に導入し、評判が良かったものを国土交通省に恒久的な制度にしてもらうように考えている。東京五輪の混雑対策として検討しているが、東京以外でも大阪などで供給不足の問題が起きているのであれば、全国的に施策を広げていきたい」

かわなべ・いちろう 昭和45年、東京都出身。米ノースウエスタン大ケロッグ経営大学院経営学修士(MBA)取得。平成12年、日本交通入社。社長を経て27年から現職。29年から全国ハイヤー・タクシー連合会会長。

【記者の目】一般ドライバーの活用検討を

 日本では「白タク」として法律で禁止されているライドシェアのスマートフォンアプリを昨年、ハワイ出張の際に初めて利用した。乗車地と目的地を指定すると、簡単に移動できたことに驚きの便利さを感じた。

 しかし、日本でもタクシー配車アプリを使えば、ライドシェアアプリとほぼ同じ便利さを享受できる。配車アプリ運営会社などが国土交通省と協力して制度などを改正し、海外のライドシェアアプリの良い点を次々に導入しているからだ。

 この背景には、「日本のタクシー運転手は世界一安心・安全なサービスを提供できる。ライドシェアは必要ない」というタクシー会社の自負がある。

 しかし、平成29年のタクシー運転手は28万人程度と17年のピーク時から10万人余りも減少する中、一般ドライバーの限定的な活用という経済同友会の提言に耳を傾ける価値はあるのではないか。

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