新型コロナウイルスの感染拡大に伴って東京五輪・パラリンピックの延期が決定し、ホストタウンを務める自治体に戸惑いが広がっている。4競技の会場を擁する埼玉県では19市町がホストタウンに登録されており、これまで大会に向けて準備を重ねてきた。選手のために確保したバスなどの予約、さまざまな交流事業の計画…。見直しを迫られる案件は山積している。
「ヒト、モノ、カネ…。全てが仕切り直しだ」
大会の延期決定に所沢市の担当者は動揺を隠せない。
同市は平成29年にイタリアのホストタウンに登録され、今年7~8月に市内で選手団の事前キャンプを予定していた。期間中の選手らの移動手段としてすでにバス会社との契約を終えているが、市の担当者は「延期された時期に都合よくバスが空いているとはかぎらない。先が全く見えず、課題は山積している」と肩を落とす。
県内で最初にホストタウンに登録された三郷市の担当者は「ゴールがないと準備を整えづらい。一刻も早く実施時期を明確にしてほしい」と語る。同市はギリシャのホストタウンで、事前キャンプ中に同国選手団と市内の子供たちの交流事業を計画していたが、延期に伴い、時期や実施内容を検討し直すという。
ブータン陸上チームのホストタウンになっている寄居町の担当者も「どの時期まで延期するか分からないので、方針が決められない」と困惑を隠せない。宿泊するホテルや練習場所の確保に入ろうとした矢先に延期が決まり、今後の予定は白紙だという。
町は、ブータン五輪委員会のスポーツ親善大使を務める元陸上競技選手、為末大さんの助力を受け、ホストタウンとして交流を重ねてきた。28年には同国のジゲル・ウゲン・ワンチュク王子が訪問、昨年夏には選手たちが町内で練習した。ブータンの人に寄居町を知ってもらおうと、同国の公用語・ゾンカ語のガイドマップを2千部用意し、国内のブータン友好団体などにも提供してきた。町を挙げた機運醸成の取り組みに水を差された格好だ。