NHKは1日、テレビ番組を放送と同じ時間にインターネットでも流す「常時同時配信」を含む新サービスを正式に始めた。試行期間の3月中には、午前7時から午前0時までの約17時間だった常時同時配信を、午前6時からの約18時間に拡大する。「放送と通信の融合時代」を象徴する動きだが、採算面や権利上の問題から民放各局は慎重姿勢を維持し、NHKの取り組みを注視している。
サービスの名称は「NHKプラス」。常時同時配信のほか、放送終了後の番組を1週間見られる「見逃し番組配信」を24時間利用できる。
1日には、午前6時過ぎにテレビ放送から少し遅れて、総合テレビで放送中のニュース「おはよう日本」の配信がスタート。午前6時20分ごろには番組内で桑子真帆アナウンサーが、サービスの本格的スタートを伝えた。
ネット配信の対象は総合テレビとEテレの番組。ただ、権利上の問題などで、ネットでは視聴できない番組や映像もある。1日午前にEテレで放送された番組の一部がネットでは見ることができず、「現在放送中の番組は配信しておりません」というメッセージが表示。「おはよう日本」でもスポーツニュースで、映像がネットには流されないケースが見られた。
放送からネットも含めた「公共メディア」を目指すNHKにとって常時同時配信は悲願のサービスといえるが、権利面での課題に加え、利用者のニーズや採算性を見いだせない民放はいまだに明確な計画を打ち出せていない。
このため、民放各局はNHKの新サービスの今後に注目を寄せる。日本テレビの小杉善信社長は3月の定例会見で「視聴者の反応とその利用状況、権利処理のコンディションなどを共有させてもらいたいと思っている」と述べた。TBSの佐々木卓社長も「実際どれぐらいの方が利用するのかや、サービスが本格的にスタートしてからのデータに注目していきたいなと思っている」と話した。
日本中で猛威をふるう新型コロナウイルスの感染拡大も、常時同時配信の将来に影を落としている。サービス普及の起爆剤として期待された東京五輪・パラリンピックは延期となり、民放各局の経営環境が厳しさを増す可能性もある。本格的な「放送と通信の融合時代」の到来には、まだしばらく時間がかかりそうだ。