新型コロナウイルスの感染拡大の影響は中小企業も直撃している。日本銀行が1日公表した3月の企業短期経済観測調査(短観)で、中小企業の製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はマイナス15と7年ぶりに低い水準だった。大企業に比べて経営体力も乏しいだけに、資金繰り難もより深刻だ。
「米中貿易摩擦による受注減から、ようやく立ち直りかけたと思ったら…」。自動車や精密機械の部品加工を手がけるサーマル化工(埼玉県戸田市)の斎藤靖彦常務は溜息をもらす。
平成31年4月から同社の仕事量は減少傾向だったが、今年2月に入り取引先からの材料納入が途絶えた。取引先の外注先の工場が中国にあり、新型コロナの感染拡大で物流が完全にストップしたからだ。
また外出自粛や移動制限は、運輸業や宿泊業といった非製造業の需要も消失させた。短観では中小企業の非製造業の業況判断DIはマイナス1と、5年3カ月ぶりにマイナスとなった。
運送業を手掛けるハーツ(東京都品川区)の山口裕(ひろ)詮(あき)社長は「例年の6割ほどしか仕事がない」と頭を抱える。転勤や入学に伴う引っ越し需要で繁忙期のはずが、仕事は激減した。
需要減少で収入の見通しが立たないだけに、中小企業は運転資金の確保にも苦しんでいる。
「会社が役員にかけている生命保険の貯蓄部分を担保に融資を受け、当座の資金繰りを乗り切った」。東京都荒川区のある町工場の経営者はこう打ち明ける。
政府と日銀は企業の資金繰り支援を強化するものの、中小企業の倒産が相次げば、日本経済へのダメージは計り知れない。(松村信仁、大柳聡庸)