首相、緊急事態宣言と108兆円対策で不安払拭へ





緊急事態宣言の発令に先立ち、参院議院運営委員会で答弁を行う安倍晋三首相=7日午後、国会・参院第1委員会室(春名中撮影)

 安倍晋三首相は7日、緊急事態宣言と同時に事業規模約108兆円の緊急経済対策を決めた。宣言によって大都市圏での人とモノの移動は大きく制約され、社会のあり方は一変する。新型コロナウイルスの感染蔓延(まんえん)阻止に向けた医療体制の強化と、終息後のV字回復を目指す2段階で具体策を示し、先行きに対する国民の動揺を抑えたい考えだ。

 「個人事業主や中小企業に早く配ることだ。彼らが今、一番大変だ。それに見合う対策の規模感も大事だ」。緊急経済対策の内容が固まった5日夜、首相は周囲にこう語った。

 新型コロナとの闘いは長期化し、首相の経済政策「アベノミクス」は「戦後最大の経済危機」に直面している。リーマン・ショックや東日本大震災と違い、景気後退の波は全国のほぼ全ての業種に容赦なく襲いかかった。今後も世界第3位の経済大国の地位を保つためには、「世界的にも最大級の経済対策」(首相)が必要と判断した。

 東京都の小池百合子知事や日本医師会が3月下旬以降、宣言の必要性に言及し始めてもなお、首相が慎重だったのは、世界の主要都市に比べ東京圏の経済力が突出しているためだ。東京圏の人口は米ニューヨークの1.8倍、英ロンドンの2.6倍で、域内総生産(GRP)はニューヨークの1.4倍、ロンドンの2.5倍と群を抜く。

 宣言を発令しても首相に指揮権はなく、これまで通り都道府県知事による外出自粛要請や施設の閉鎖指示にとどまる。海外のように外出禁止命令は出せず、都市封鎖(ロックダウン)も想定しない宣言では感染阻止に限界がある。一方で経済が打撃を受けるのは確実で、「物流崩壊などデメリットのほうがはるかに大きい」(政府高官)。

 経済対策の目玉は中小企業対策だ。首相は7日の記者会見で「日本経済を支える屋台骨は中小・小規模事業者だ。本当に苦しい中でも今、歯を食いしばって頑張っている皆さんこそ日本の底力だ」と強調した。税金や社会保険料の支払い猶予に26兆円を投じて中小企業の事業継続を支援することは、終息後の日本経済の回復に不可欠となる。

 宣言の実施期間は5月6日までだが、その後も感染爆発直前の「瀬戸際」が続いて延長を余儀なくされれば、かえって国民の失望を招き、景気を冷やす恐れもある。首相は宣言後の出口を見据え、国民の理解と協力を得る不断の努力が欠かせない。(小川真由美)



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