改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を受け、遊興施設や運動施設、劇場などに対する休業要請が13日、埼玉県内でも実施された。期間は5月6日まで。同県では、東京都の「協力金」のような補償はなく、不安を口にする事業者は少なくない。県に対し、自らの店舗が休業要請の対象なのかを尋ねる電話も相次いでいる。
「お客さまとスタッフの感染予防の観点から休業要請は理解できるが、補償がないのは納得できない」
こう不満を漏らすのは、4月13日から休業に入った八潮市の卓球施設「卓球家840」の正海三弘社長だ。東京都が営業自粛に協力した企業に協力金を出すことについては「小池百合子知事の判断は早く、すばらしい。協力金はうらやましい」と語る。
県西部のある自動車学校も13日からの休校を決め、期間中の教習などの予約をすべてキャンセルした。担当者は「土日に電話やメールで連絡を取り、何とか予約者全員の了解を得た。今後職員がどう働くのか決まっていない」と不安そうに話した。
約650人の生徒が通う「そろばん教室USA」(さいたま市浦和区)は、県の要請に先立って9日から休業している。高柳和之代表は「5月6日までの休業期間がさらに延びると経営的にも苦しくなる」と明かし、「ドイツはすぐに補償をしてくれると聞いた。日本も迅速にしないと廃業に追い込まれる中小企業が増える」と訴えた。
蕨市の河鍋暁斎記念美術館は、4月12日から5月7日までの休館を決めた。河鍋楠美館長は「ゴールデンウイークに休館するのは痛手だが、感染状況を考慮するとやむを得ないと判断した」と話す。
どの業種が休業要請の対象なのかが細かく定められていないことも混乱を生んでいる。例えばパチンコ店だ。県が公表した要請対象の業種一覧には「遊興施設」などの文言はあるが、「パチンコ店」と明文化されているわけではない。
ある大手チェーン店は自主的に休業措置を取っているが、13日も営業を続けている店もあり、業界内に足並みの乱れがある。蕨市のパチンコ店のスタッフは「業界団体から休業の要請があれば、従わざるを得ない。いつ休業になってもおかしくない」と語る。
県危機管理課によると、自らの店舗が休業要請の対象に該当するかを確認する問い合わせは11、12両日で計383件あり、特に飲食店からの質問が多かったという。業種一覧に「その他」という言葉が含まれていたため、混乱した事業者も多かったようだ。
大野元裕知事は10日の記者会見で、対象業種を細かく指定していない理由について「事業者はプロなので(要請対象か)知っているはずだ。説明する必要はない」と持論を述べた。(黄金崎元、竹之内秀介)