【遠藤良介のロシア深層】軍施設からの菌流出を隠蔽、全体主義の病

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 「肉を食べないように。菌に汚染されている恐れがある」。ソ連時代の1979年4月、ロシア中部スベルドロフスク(現エカテリンブルク)の住戸にはこんな趣旨のビラがまかれた。地元メディアも同様の報道を行った。

 同月4日以降、現地の病院には高熱や呼吸困難の重症患者が次々と運び込まれていた。肺などに炭疽(たんそ)の症状があり、容体はきわめて急速に悪化した。ソ連医務総監ら専門家が現地入りし、「食肉からの炭疽菌感染」と断定した。

 夫を亡くした遺族の回想によれば、病院では患者との面会が許されず、掲示板の重症者や重篤者のリストで容体を知らされた。自宅アパートには防護服姿の保健所員がやってきて室内を塩化石灰で消毒した。私服の治安機関員もやってきて夫の行動などを尋ね、「口外してはならぬ」とくぎをさした。夫の棺を開くことは許されなかった。

 市内の病院にも旧ソ連国家保安委員会(KGB)の要員が張り付いて医師らを監視し、治療経過書などを没収した。

 現実には、「食肉による感染」というのは偽情報工作だった。スベルドロフスクの軍事閉鎖地区「スベルドロフスク19」にある軍の細菌研究所から炭疽菌が流出したのが真相である。研究所の職員がフィルターの外れた状態で設備を動かしてしまい、排出された炭疽菌が風に乗って拡散した。当時の風が吹いていた方角に感染者は集中していた。

 こうしたことが明らかになるのは、91年のソ連崩壊で言論が自由になってからである。当時の研究所関係者や調査を行った専門家らが真相をメディアで語り始めた。ソ連は72年の生物兵器禁止条約に違反して生物兵器の研究を続けていた。

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