今の今までいい顔をしていたのに、陰では不敵にニヤリ…。出る人物が次々にそんな表情をする、まさに「登場人物、全員裏切り者。」というコピーそのままのラブサスペンス。その中で主人公、荻野爽(さやか)(新川優愛)の母、小高(こだか)かすみを演じる。夫に去られて精神を病み、爽からも反面教師にされている役どころだ。
「企画を聞いて、爽の人生を左右するキーパーソンで、ちょっと難しい役だけれど、思い切って挑戦してみようかな、と思いました」とその第一印象を語る。原作漫画とは少しイメージも変え、「夫が赤が好きだったということにして、赤をポイントにしている」と話す。
新川やその夫、一真役の小池徹平、高校時代の恋人・秋山慶一役の町田啓太らの若手中心に展開されるドロドロ、キュンキュンのストーリーとは別に、かすみは爽だけとやり取りし、合わせて爽との回想シーンも描かれる形。双方の撮影をこなす新川を見て、主役の大変さなど「気持ちが分かる」という。「私も朝ドラをやっていて、そのときに気持ちをつくるのがいかに大変かと学んだので。陰で応援しています」と笑う。
ドラマでは「人物設定を自分の中で何となく考え、つくりあげる作業が面白い」とその作業を続ける。かつて久世光彦監督から「自分と役が出合う接点を見つけなさい」とアドバイスを受け、「役になりきるのは無理なので、いつも接点を探している」と明かす。ところが、今回はその接点が見つからず、河原瑤監督からドラマでは直接描かれない人物設定をもらった。「母に愛されず、高校生のときに母が亡くなって夫が全て、という小さな世界で生き、夫に依存している」と聞き、「なるほど」と得心した。
「一人旅やワインバーなどで一人の時間を持ち、自分と対話することも大切」と気持ちの切り替え方を話す。その一方で、長く女優を続けていても「難しいシーンの前日は眠れなかったりする」という。感極まるシーンでは「お芝居なんだけど相手と心が通じ合って、シーンが終わってもドキドキが続くこともある」と話すなど、やはり根っからの女優でもある。「日常生活では感じられないことを感じさせてもらえるのが楽しい」
今回のドラマも「爽の人生をどう左右するのか、そして最後にはどうなるのか楽しみに見てほしいです」と笑顔で語ってくれた。 (文化部 兼松康)
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とだ・なほ 昭和49年生まれ、広島県出身。平成2年に現所属事務所のオーディションでグランプリを獲得し、芸能界入り。5年のNHK連続テレビ小説「ええにょぼ」で主演したほか、フジテレビ系「ショムニ」でも好演。30年からはEテレ「NHK俳句」にも出演する。「言葉のセンスを磨く意味でも俳句はいい遊び。『これだ!』という句ができると『わーっ!』という感動があります」