【シンガポール=森浩】アジア各国で新型コロナウイルス対策として実施していたロックダウン(都市封鎖)などの制限措置を緩和する動きが相次いでいる。感染拡大に「一定の歯止めがかかった」との判断によるものだ。ウイルスの再拡大を警戒しつつも、経済的影響を最小限に食い止めるため、国内を早期に平常化させたい意向がある。
タイでは3日、休業となっていた市場やレストラン、理容店など一部の業種で営業が再開した。タイ国内の感染者は2969人(3日時点)だが、3月26日の非常事態宣言後の増加数は抑えられており、4月末以降の日々の感染者増加は1桁台にとどまる。政府は「伸びが2桁、3桁に増えれば見直しが必要になる」と留意しつつ、業種別に4段階に分けて営業再開を拡大していく方針だ。
マレーシアでは3月18日から企業などに活動制限を設けているが、5月4日から大半の経済活動の再開を可能とする。産業別に定めた新型コロナ対策の作業手順書を徹底することが条件となる。ムヒディン首相は、都市封鎖の影響で「マレーシア経済は630億リンギット(約1兆6千億円)の損失を受けた」と話し、経済を早期に回復軌道に乗せたい考えを示した。既にベトナムでも一部で経済活動再開が認められた。
世界通貨基金(IMF)は今年の国内総生産(GDP)成長率について、タイはマイナス6・7%、マレーシアはマイナス1・7%と予想している。既に観光業などで業績が大幅に落ち込む実態が報告されており、立て直しは急務だ。
一方、インドは全土封鎖について、3日だった期限を2週間延長した。感染者数は封鎖初日(3月25日)の約600人から約4万人にまで増加しており、拡大防止を優先させる方針だ。