【ソウル=桜井紀雄】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は就任3年となる10日、大統領府で演説し、新型コロナウイルスの防疫で「すでにわれわれは世界をリードする国となった」と強調、「経済危機の克服でも世界の手本を目指す」として、残る2年の任期で「世界をリードする韓国の道を切り開いていく」と訴えた。
韓国は新型コロナの感染拡大の押さえ込みに成功していると国際社会で評価され、国内でも最新の世論調査で文氏の支持率は71%まで上昇した。歴代大統領が任期後半のレームダック(死に体)化に苦慮してきた中、文氏は防疫での成果を前面に掲げ、求心力を維持する構えだ。
文氏は、迅速な検査体制など韓国式の防疫を指す「K防疫」は「世界の標準になった」と指摘。「韓国の国家としての地位と国民の誇りはいつにも増して高まっている」と述べた。新たな感染の波に備え、現在、防疫を統括する疾病管理本部の独立性を強化し、疾病管理庁に昇格させるなどの政策を打ち出した。
「大恐慌以来、最悪のマイナス成長に直面」した経済をめぐっては、IT・デジタル事業で雇用を創出する「韓国版ニューディール」を国家プロジェクトとして推進すると宣言した。
外交や安全保障では、伝統的な軍事安保から災害・疾病・環境問題などの脅威に対応する「人間の安保」で「主導的な役割を果たしていく」と強調。停滞したままの北朝鮮との関係でも「人間の安保で協力して一つの生命共同体となり、平和共同体への前進を希望する」との持論を展開した。
いわゆる徴用工判決問題で悪化した日本との関係についての言及はなかった。