【小菅優の音楽と、夢に向かって】自粛で知った黒澤映画のすごさ

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映画監督、黒澤明さん

映画監督、黒澤明さん

 引き続き、家で自粛の時間が続いております。そんな中、手の込んだ料理や、体力が衰えないようにエクササイズをするのも気分転換になりますが、やはり自分の大好きな映画鑑賞が一番落ち着きます。

 今まで見ていない邦画などがたくさんあり、リストを作ると見たい映画がわんさと出てきて切りがないのですが、とりわけ、繰り返し見ているのが黒澤明監督の作品です。「用心棒」(昭和36年)や「七人の侍」(29年)は前から好きですが、本当にすごいと思ったのは「天国と地獄」(38年)でした。

 高台に豪邸を持つ大手企業の常務が誘拐事件に巻き込まれるサスペンス。約60年も前の映画なのに、現代と共通する事柄が。分かりやすくて面白く、登場すると目が離せない主役の三船敏郎、侍姿でなくてもカッコいいです。

 1時間ぐらい1つの部屋から出ないところが舞台劇のようで、アルフレド・ヒチコック監督の「ロープ」(1948年)を思い出しましたが、緊張感があってどんどんのめり込んでしまいます。盛りだくさんで長いのに、もう次が知りたくて、ハラハラドキドキ、椅子におとなしく座っていられません。そして、モノクロの中で一瞬赤い色が使われるあのシーン、なんと衝撃的なのでしょう。

 人間の心の動きが映像で語られ、貧富の差に端を発する妬(ねた)みや恨みといった心の奥の黒い部分と、同情や優しさといった白い部分がモノクロの世界で明確に表現されます。私の知らなかった当時の下界の映像。あまりにも残酷な部分と何とも魅力的なナイトライフの世界が共存し、その両価的な面に皮肉を感じます。

 最近、さまざまな場面で残酷さを露呈する格差問題は、昔から解決が困難なようです。仕事に追われ、ゆっくり考えられなかったことが家にいると脳裏から引っ張り出されてきます。黒澤映画の面白さに魅了されたと同時に、そのヒューマニズムの描写に考えさせられることがたくさんありました。

 (こすげ・ゆう=ピアニスト)

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