台湾のWHO参加支持を 日本と難局を乗り切る 台北駐日経済文化代表処代表 謝長廷





謝長廷台北駐日経済文化代表処代表(提供写真)

 台湾と日本は海を挟んで隣り合い、地震や台風などの防災は共通の課題だ。近年は大規模災害時に相互に助け合う「善の循環」が形成されている。今回の新型コロナウイルスによる肺炎の防疫も同様で、台湾と日本の強い絆は変わらない。

 台湾は2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の経験から、早期に感染拡大国との往来制限や厳格な隔離など厳しい措置を取り、市中感染を封じ込めることにおおむね成功している。マスクは一時不足したが増産態勢が整い、4月末時点で生産能力は1日当たり1700万枚に達し、需要をまかなえるようになった。そこで、われわれは医療物資が逼迫(ひっぱく)している国々に支援の手を差し伸べたいと考えている。新型コロナに打ち勝つことは、世界共通の責任だからだ。

 4月21日、台湾からの救援物資として、医療用マスク200万枚が成田空港に到着した。私は日華議員懇談会の古屋圭司会長とともに到着に立ち会った。台湾の貨物機から出てきたマスクの箱には「Taiwan Can Help」「台湾日本友好」と書かれた赤い横断幕が掛かっていた。まさに「まさかの時の友こそ真の友」という言葉通りだと感じた。マスクは日本各地の医療機関や特別支援学校などに贈られる。少しでも役立てば幸いだ。

 台湾と日本の連携は、民間でも活発だ。特に日本在住の台湾人は、社会の一員として日本の感染状況を心配しており、ウイルスに打ち勝つために共に戦い、少しでも日本社会に役立ちたいという気持ちが強い。

 東京を拠点とする台湾系商工会の代表者と台湾の慈善団体は4月20日、合同で東京都庁に1万2千枚のマスクを寄贈した。関西でも、医療用ガウンが不足する大阪で松井一郎大阪市長が代替品として雨がっぱの提供を求めたところ、関西在住の台湾人医師の呼びかけで1万2千着が集まり、台湾から順次、日本に届けられている。関西の台湾系商工会も複数の団体が雨がっぱを寄贈した。

 最近の日本の報道番組では、台湾の防疫対策が紹介されることが多い。台湾は新型コロナという共通の敵を倒すために日本と協力を深めていきたい。だが、協力を阻む壁の一つが、台湾が世界保健機関(WHO)から排除されていることだ。これは日本在住の台湾人にとっても不安と不公平を感じるものであり、台湾系の団体が毎年5月のWHO総会に合わせて台湾の参加支持を呼びかけている。

 日本各界の支持を引き続き得ながら、台湾の防疫の経験がWHO加盟国と共有できることを望むとともに、台湾と日本が支え合い、この難局を一日も早く乗り切れることを願う。(寄稿)



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