【北京=西見由章】中国共産党中央規律検査委員会は13日までに、国有造船最大手「中国船舶重工集団」(現・中国船舶集団)の元会長、胡問鳴氏を「重大な規律違反と違法行為」の疑いで調査していると発表した。海軍艦艇を開発・建造する同社で、胡氏は昨年12月に就役した中国初の国産空母「山東」の建造に当たり総指揮を務めた。2018年以降、中船重工幹部らの摘発が相次いでおり、中国海軍の装備開発に影響が出ている可能性がある。
同社をめぐっては中央規律検査委が18年6月、孫波元社長に対する調査を発表。孫氏は第三者に便宜を図って報酬を受け取り、「国家利益に重大な損失」をもたらしたなどとして収賄罪や職権乱用罪に問われ、19年7月に懲役12年の実刑判決を受けた。
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは軍関係者らの証言として、孫氏が中国初の空母「遼寧」に関する機密情報を外国の情報機関に渡した疑いで罪に問われたと報道。孫氏の公判は「国家秘密に関わる」として非公開で行われた。一方、他国に情報を漏らした場合に適用される国家安全危害罪については起訴・判決時の発表で言及されていない。認定された犯罪事実について具体的な説明はなく、真相は不明だ。
また、孫氏の事件と今回の胡氏に対する調査に関連があるかについても現段階ではわかっていない。
18年12月には中船重工の研究所の前所長が、規定に違反しカナダ国籍を取得したなどとして共産党籍の剥奪処分を受けている。
中国の軍事専門家は共産党機関紙、人民日報系の環球時報(英語版)で、国産空母建造の責任者だった胡氏に対する調査が「中国の艦艇建造計画に影響を与えることはない」としつつ、一連の不祥事が「軍需産業に警鐘を鳴らしている」と危機感を示した。