新型コロナウイルスの感染拡大を受けた「巣ごもり」生活は、世界各地で新しいライフスタイルを生み出している。2008年のリーマンショック後の経済状態を意味した「ニューノーマル(新常態)」という言葉はいまや、知恵を絞ってコロナ禍を乗り切る「新たな日常」を指すものとして定着しつつある。(ロンドン 板東和正、ワシントン 住井亨介)
運動、数独
欧州諸国では、国民がインターネットを通じてエクササイズを学んだり、芸術作品を鑑賞したりしながら、外出制限下の生活を乗り切っている。
英国人のフィットネス専門家、ジョー・ウィックスさんは英政府が外出制限を開始した3月23日から、子供向けに体操を教える動画をユーチューブで公開している。平日午前9時から約30分間行うライブ配信は英国内を中心に話題を集め、視聴者は数百万人に上る。
人気の秘訣(ひけつ)は、動物の動きなどに例えながら室内でできる運動を実演する分かりやすさ。小学生の長男と一緒に動画を視聴しているというロンドンの主婦、エミリー・ワトソンさん(34)は「子供が自宅の居間で体操することが日課になった」と話す。
また、外出制限下で脳の老化が進むことへの懸念から、数字のパズルゲーム「数独」に熱中する英国民も増えた。新型コロナに感染したジョンソン英首相も療養中に数独を解いていたことが知られる。
アートで後世に
芸術作品のオンライン鑑賞もブームになっている。大英博物館は公式サイトで190万点以上の所蔵品の画像を無料公開。画像は拡大して細部まで閲覧できる仕組みだ。パリの国立シャイヨー劇場はこれまでの公演の映像を配信している。
イタリアやスペインなどの芸術家が新型コロナ問題を後世に伝えるため、外出制限下の生活を表現したアート作品をSNSに投稿。同様の活動は市民にも広がり、写真共有アプリ「インスタグラム」で1千以上の作品が公開されている。