日本のバレエ界には、自らを戒める有名な“格言”がある。「稽古を1日休むと自分に分かる。2日休むと仲間に分かる。3日休むと観客に分かる」-。日本を代表するプリマバレリーナで70年近い舞踊歴を持つ森下洋子さんが常々、口にしてきた言葉だ。新型コロナウイルス感染拡大による政府の緊急事態宣言で多くのバレエ団のスタジオも閉鎖し、日々のレッスンが欠かせないプロのバレエダンサーにとっては“非常事態”だ。一体、どう過ごしているのか?内外の主なバレエ団の様子を聞いた。(水沼啓子)
森下さんが理事長・団長を務める松山バレエ団も4月7日の緊急事態宣言を受け、スタジオからオンラインでのレッスンに切り替えた。日々の稽古は無料通信アプリ「LINE(ライン)」を使い、朝9時半過ぎにいつも通り朝礼からスタートし、約60人の団員がそれぞれの家で一斉に行っている。
通常のレッスン後、公演のリハーサルもオンラインで行っている。同バレエ団総代表の清水哲太郎さんは「次回の公演の準備を万端に整えようということで、全員でシェアしながらやっている」と話す。
スタジオが閉鎖中の東京バレエ団では団員が各自、自宅で稽古を続けている。同バレエ団のプリンシパル(最高位ダンサー)、秋元康臣さんは「広いスタジオと違って自宅で動ける量が違うので体力を維持するのが大変」と苦労している様子。「体幹を鍛えるトレーニングをするよう心がけている」という。
スタジオが使えたときは普段、通常のレッスン後にリハーサルを行い、毎日7時間ほどは体を動かしていたという。7月中旬には公演が予定されているが、リハーサルも行えていない。秋元さんは「準備期間が短くても、できる限りの努力をする」と公演への思いを語った。