すべての国民に一律10万円を支給する特別定額給付金の申請で混乱が起きている。マイナンバーカードを使ったオンライン申請で多数の不備がみつかり、自治体が照合作業などに手間取る事例が急増している。
1人で複数回にわたって申し込んだり、記入した情報に多くの誤記が発生したりしている。このため、給付金の支給に時間がかかると判断し、オンラインによる申し込みを中止する自治体が相次ぐ事態となっている。
新型コロナウイルス対策で迅速な給付金の支給が求められているが、手間を省くはずのオンライン申請がかえって自治体の負担になっているようでは本末転倒だ。申請の制度設計に問題があったのは明らかである。
政府は自治体と連携してどのようなミスが多いかを分析し、システムの改善を急ぐ必要がある。
オンラインによる申請は、内閣府の「マイナポータル」サイト内にある給付金の申請ページから、住んでいる自治体に世帯主が申し込む。世帯主の本人確認用にマイナンバーカードが必要で、世帯主以外の家族の名前は申請者が自ら入力する仕組みだ。
しかし、記入ミスがあっても受け付けてしまうため、申請内容と世帯情報が合っているかを自治体の職員が確認している。本来ならオンライン申請の方が早く支給されるが、市区町村は照合作業に追われており、給付金の支給に遅れが生じかねない。
一部の自治体では独自の照合プログラムで人手に頼らない自動化を進めている。政府はそうした現場の情報を速やかに収集しなければならない。申請項目の用語も難しいという批判が根強い。修正の余地は大きい。
マイナンバーカードは税務や社会保障などの効率化のため4年前に導入されたが、国民の利便性は低く、普及は遅れている。このため、政府・与党は預貯金口座とマイナンバーのひも付け義務化を検討し、早ければ来年の通常国会に関連法改正案を提出する。
これが実現すれば、災害時に支援金を迅速に振り込むなどの利便性の向上が期待できる。社会保障などの効率化にもつながろう。
それだけにマイナンバーに対する国民の信頼が不可欠だ。政府は今回の混乱を厳しく受け止めねばならない。