8日から行われた令和2年度第2次補正予算の審議は、新型コロナウイルスの感染が再拡大する第2波への備えや、「ポストコロナ」時代の国家や社会のあり方について、政府と与野党が論戦する今国会最後の見せ場だった。しかし、野党は「持続化給付金」事業の事務委託の問題など政権の疑惑追及を優先し、議論が深まることはなかった。
「電通ほどの会社になれば、与野党問わず、知り合いがいるという人はたくさんいるのではないか」
安倍晋三首相は12日の参院予算委員会で、大手広告代理店、電通との交友関係を尋ねた野党議員にこう疑問を呈した。
持続化給付金事業をめぐっては、経済産業省から事務委託を受けた一般社団法人が電通に再委託したため、野党は委託費の「中抜き」や電通と政府との関係を繰り返し批判。政府は防戦を余儀なくされた。
象徴的だったのが、立憲民主党の枝野幸男代表と国民民主党の玉木雄一郎代表が質問に立った9、10両日の衆院予算委だ。首相と直接対決する機会だったが、2人とも同事業の質問に時間を割き、コロナ後の国家像などについては終盤に駆け足で触れただけだった。
感染拡大によって、給付金の支給に時間がかかる日本の行政システムや強制力を持たない特別措置法の不備など、さまざまな課題が浮き彫りになっている。欧州などでは、新型コロナ対策として地球温暖化防止の視点を踏まえた企業支援といった動きも出ているが、一連の審議でそうした議論は見られなかった。
今回も政権批判を際立たせた野党が、17日に会期末を迎える今国会の延長を求めても説得力がない。一方で、与党にも河井克行前法相の公職選挙法違反事件などの懸念材料がある中、閉会を急いだとの見方もある。日本維新の会が求めた新型コロナに関する特別委員会の設置案も含め、本質的な議論は先送りとなった。
(田村龍彦)