ネタニヤフ首相の「暴走」にトランプ政権が強い不満:中東情勢緊迫化と国内危機

米国ワシントンD.C.から伝えられる情報によると、ドナルド・トランプ政権内でベンヤミン・ネタニヤフ・イスラエル首相に対する強い不満が募っている。米メディア「アクシオス」は、ホワイトハウス関係者の声として、ネタニヤフ首相の最近の行動を「狂った人間のように振る舞い、常にあらゆるものを爆撃しようとしている」と表現。ガザ地区への空爆やシリア内戦への介入における彼の過激なアプローチが、もはや制御不能な状態にあるとの懸念が表面化している。ホワイトハウス関係者6人への取材に基づき、「ネタニヤフ首相が時に言うことを聞かない子どものように行動する」と報じられており、トランプ政権の懸念は相当なものと見られる。

シリア介入への懸念増大

トランプ政権の不満は、イスラエルによるシリア・ダマスカスの大統領宮空爆後に本格化した。ネタニヤフ首相の過度に衝動的で破壊的な行動が、トランプ米大統領の外交政策全体に悪影響を及ぼす可能性が認識されている。この緊張は、イスラエルがシリアのスワイダーでの衝突に介入した局面で顕在化した。シーア派のドゥルーズ派とスンニ派のベドウィンの間で発生した衝突に対し、イスラエルは親イスラエル派であるドゥルーズ派保護を名分に、7月15日にスワイダーのシリア軍を攻撃。これに対し、トランプ大統領のシリア特使であるトム・バラック駐トルコ米国大使は直ちにイスラエルに対し外交的解決に向けた自制を求め、イスラエルは一時同意した。

しかし、攻撃をわずかに遅らせただけで、イスラエルはシリア大統領宮と南部の政府軍を標的に再び攻撃を開始し、スワイダーでの流血事態はさらに拡大した。シリア人権監視団(SOHR)は、この事態で発生した死亡者を1120人と集計。アクシオスは「ホワイトハウス関係者は『先週イスラエルがホワイトハウス内に貯め込んだ否定的評判が彼らには全く伝わっていないようだ。イスラエルは気付かなくてはならない』と話した」と報じ、イスラエル側への強いメッセージが込められていることを示唆した。

トランプ米大統領(左)とイスラエルのネタニヤフ首相の会談風景。トランプ政権がネタニヤフ首相の積極的な軍事作戦に不満を抱いている状況を表している。トランプ米大統領(左)とイスラエルのネタニヤフ首相の会談風景。トランプ政権がネタニヤフ首相の積極的な軍事作戦に不満を抱いている状況を表している。

ガザ地区での教会砲撃と米国の警告

ガザ地区の教会砲撃もまた、トランプ政権内の不満を煽る主要因となった。7月17日、イスラエルがガザ地区唯一のカトリック聖堂を空爆し、3人が死亡した。これを受けてトランプ大統領はネタニヤフ首相に直接電話をかけ、「毎日何か新しいことが起きている。どういうことなのか」と説明を要求したと報じられている。アクシオスは、「ネタニヤフの幸運とトランプの好意は近くすっかりなくなるかもしれない」という警告がホワイトハウス関係者らから発せられたと伝えており、米イスラエル間の関係悪化に対する懸念が深まっている。

軍事作戦の拡大と人道危機

こうした警告にもかかわらず、ネタニヤフ首相の積極的な軍事作戦は止まる兆しを見せていない。イスラエル軍は7月20日、ガザ地区中部デイルアルバラ地域の住民と避難民に対し、南部海岸のアルマワシ地域にただちに退避するよう命令を下した。イスラエル軍がこの地域に退避令を出したのは、2023年10月の戦争勃発後で初めてであり、ガザ地区に地上戦を拡大するという明確なシグナルと受け止められている。イスラエル軍報道官は同日、交流サイト(SNS)を通じて「イスラエル軍は敵のテロインフラを破壊するために強力な軍事作戦を継続しており、これまで作戦を遂行していなかった地域にも活動を拡張している」と強調した。

イスラエルの戦線拡大により、犠牲者数も増加の一途をたどっている。ロイターなど外信は7月20日、イスラエル軍が同日ガザ地区で救護品を待っていた住民らに発砲し、93人が死亡、数十人が負傷したと報じた。世界食糧計画(WFP)は同日の声明で、「食料救護品を積んだWFPの車25台がガザ地区に進入したのに続き、飢えた大規模な民間人群衆と衝突し、その後銃撃が行われた。民間人が人道主義的支援を受けるに当たりどのような形の暴力も容認できない」とイスラエル軍を強く批判した。これに対し、イスラエル軍は「即刻脅威を除去しようとする目的で警告射撃をした。われわれは人道的トラックを意図的に狙わない。犠牲者数が誇張されたかもしれない」と反論している。

ネタニヤフ首相の国内問題:汚職裁判と健康

ネタニヤフ首相は「外治」だけでなく「内政」においても際どい歩みを継続している。彼の連立政権が少数与党政権に転落した状況に加え、政治生命を左右するもう一つの変数である収賄事件の裁判は、ひとまず時間を稼ぐ形となった。彼は富豪から26万ドル相当の贅沢品を賄賂として受け取った容疑で、2019年から裁判を受けている。

タイムズ・オブ・イスラエルは7月20日の報道で、「ネタニヤフ首相が食中毒の症状で今後3日間在宅勤務に入り、21日と22日に予定されていた収賄事件の裁判が延期された」と伝えた。イスラエル検察は、ネタニヤフ首相が予定日に出席困難な場合、期日を23日と24日に先送りするよう裁判所に要請したが、裁判所は日程上週内の延期は難しいとして期日を取り消し、今後決めることとした。イスラエルの裁判所が今週から9月5日まで夏の休廷期に入るため、裁判再開には相当な期間が必要とされる見込みだ。現在75歳のネタニヤフ首相は、2023年にペースメーカー挿入手術やヘルニア手術を受けるなど、この数年間健康不安を訴えている。

結論

ネタニヤフ・イスラエル首相は現在、国内外で極めて困難な状況に直面している。米国トランプ政権からの強い不満は、彼の過激な軍事作戦が中東地域の安定に与える影響と、それに伴う外交上の波紋を浮き彫りにしている。特に、シリアへの介入やガザ地区での人道危機は、国際社会からの批判を招き、米国の外交政策との摩擦を生んでいる。同時に、国内では収賄事件の裁判が彼の政治生命を脅かし、健康問題も加わり、その指導力はかつてないほど試されている。これらの複合的な問題が、今後のイスラエル内外の情勢にどのような影響を与えるのか、国際社会の注目が集まっている。

参考文献

  • アクシオス (Axios)
  • ロイター (Reuters)
  • シリア人権監視団(SOHR)
  • 世界食糧計画(WFP)
  • タイムズ・オブ・イスラエル (The Times of Israel)
  • EPA=聯合ニュース