17日に閉会した第201通常国会では、政府が提出した法案59本のうち55本が成立し、成立率は93・2%だった。政府・与党は検察庁法改正案など野党が強く反発した法案は早々と成立の見送りを決め、新型コロナウイルス対策となる2度の補正予算の確実な成立を優先した。法案成立率は例年並みの水準を維持したが、「安全運転」に徹する姿勢が目立った。
「議院運営委員会での首相への質疑は45年ぶりだった。緊急事態宣言が発令されるなど、異例の国会だった」。衆院の高木毅議運委員長(自民)は会期末となった17日、今国会をこう振り返った。新型コロナの感染拡大前だった1月の開会時、政府・与党は今月18日告示の東京都知事選(7月5日投開票)などを見据え会期延長は難しいと考え、この時点で提出法案数を過去最少の52本としていた。
しかし、その後に新型コロナが猛威を振るい、国会は政府による緊急事態宣言の発令を可能とする改正新型インフルエンザ等対策特別措置法を3月に成立させるなど対応に追われた。
そうした中で野党が集中砲火を浴びせたのが、検察官の定年を引き上げる検察庁法改正案だった。改正案は国家公務員の定年を65歳に引き上げる国家公務員法改正案と一本化された「束ね法案」だったが、野党は賭けマージャン問題で辞職した黒川弘務前東京高検検事長の定年を延長した1月の閣議決定と関連付けて反対した。
与党は「強行採決」も選択肢としたが、著名人やネット世論の反発を受け、令和2年度第2次補正予算の審議を優先させるために成立を断念。同じく著名人らが懸念を示した種苗の不正持ち出しを禁じる種苗法改正案や憲法改正手続きに関する国民投票法改正案の成立も見送った。自民党関係者は「この状況下で強硬なことはできず、仕方なかった」と話す。
新型コロナ対策の現金給付をめぐっては、政府・与党の足並みの乱れで第1次補正予算案を組み替える異例の事態ともなり、次期国会に課題を残した。(大橋拓史)