キャッシュレス後進国脱却へ 比率過去最高も勢い持続に課題 





スマートフォン画面に並ぶキャッシュレス決済のアプリ(宮崎瑞穂撮影)

 令和元年のキャッシュレス比率が26・8%と大幅に上昇したことは“キャッシュレス後進国”とされる日本でも現金以外の決済手段が広がり始めていることを示している。背景には政府のポイント還元策などによる後押しがあるが、7年に4割程度という政府目標の達成には、ポイント還元終了後の勢いの持続が課題だ。今後は金銭面での「お得感」にとらわれないキャッシュレスの魅力の向上のため、官民を挙げた地道な取り組みが重要となる。

 「ポイント還元はキャッシュレスの裾野の広がりに効果があった」。今月10日に開かれた有識者会議の初会合で、委員からはこうした意見が出た。26・8%の内訳をみると、クレジットカードが24・0%と大部分を占めた。少額決済が多いとみられるQRコードは0・31%にすぎないが、平成30年の0・05%と比べると6倍に増えた。

 ポイント還元に参加した店舗数は約115万店で、対象となる中小店舗約200万店の過半数が登録した計算。当初想定の50万店を大きく上回った。令和元年のキャッシュレス比率は前年比で2・7ポイント上昇しており、このペースが続けば6年には40%に達する。

 しかし政府によるポイント還元は今月末で終わる。政府の本格的な後押しがなかった平成30年以前の8年間は平均1・4ポイントしか伸びていなかっただけに、今後も現在の勢いを持続できるかが課題だ。

 こうした中、政府は9月からマイナンバーカードを活用したポイント還元策を実施する。しかしカードの普及率は約17%にすぎず、キャッシュレス比率を押し上げる効果は見通せないうえ、この還元策も来年3月には終了する。令和元年に利用者が急増したQRコード決済も、各社による消費者還元キャンペーンが一段落しており、「キャンペーンが終われば利用者は離れる」(関係者)との指摘も少なくない。

 経済産業省は23日の有識者会議で、キャッシュレスの決済事業者に手数料情報や、現金が店舗側にいつ入るかという「入金サイクル」の開示を促すガイドライン(指針)を策定。7月上旬にホームページで一覧できるようにする。事業者間の競争を促して手数料を引き下げ、中小店舗の負担軽減につなげたい考えだ。

 もっとも、キャッシュレス対応店舗が増えても、利用者が使おうと思わなければ意味がない。このためキャッシュレスの魅力を高めることで、地域経済を活性化しようとする地方自治体や集客力をつけようとする店舗の創意工夫も問われる。経産省はポイント還元で得られたキャッシュレス決済のデータを開示するなどして活用を促す方針だ。(高橋寛次、蕎麦谷里志)



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