歌手の山川豊、2年ぶり新曲「拳」に込めた男の決意





拳を握り、新曲「拳」を語る歌手、山川豊=東京都港区

 歌手の山川豊(61)が24日に2年ぶりの新曲を出す。「拳(こぶし)」。失意の底にある男が再起をはかる内容だ。聴く人を鼓舞する。山川は、この歌を10年間、封印してきた。新型コロナウイルス禍のただ中で封を切ったのは偶然だが、コロナの時代の私たちの心境に寄り添う歌ともいえそうだ。(石井健、写真も)

 「拳」は、3番まである歌が、それぞれ「しょっぱいよなあ」「あったかいなあ」「やるっきゃないなあ」というつぶやきで結ばれるのが印象的だ。その変化が「拳をテコにはい上がる」と決意する男の心もちの変化を端的に表す。

 10年前に新曲として用意されたが、山川は「50代で表現できる歌ではない」と断っていた。還暦を迎えて歌う決心をした。

 作詞は松井由利夫、作曲は水森英夫。氷川きよしの「箱根八里の半次郎」「きよしのズンドコ節」などを手がけたコンビだ。「拳」も、いかにも演歌らしい長調の旋律でつづられる。

 だが、山川は、ソフトな語り口が身上である自分が歌うのにふさわしく仕上げることにこだわった。編曲の石倉重信がこれに応えた。穏やかでまろやかな伴奏を施し、印象的なハーモニカが哀愁を添える。

 歌詞は普遍的だと山川は考えている。

 「どん底に落ちた経験は誰にでもあるでしょう。僕にもあった」と振り返るのは、昭和56年に「函館本線」でデビューし61年にNHK紅白歌合戦に出場を果たすまで順調だったのに、徐々に仕事が減り、「滑り落ちていくのが自分でも分かった」頃のことだ。

 初心に戻って地道なキャンペーンに取り組むなどしたが、簡単にははい上がれなかった。「心が折れそうだった」。不眠症の解消のためにボクシングを始め、ボクサーたちの壮絶な姿を見て、「俺は甘い」と目が覚めた。

 1年遅れでデビューしていた兄の歌手、鳥羽一郎の存在も大きかった。

 「兄は、その頃絶好調。兄を褒められたお袋が『山川豊もお願いします』と頭を下げた。あのまま終われなかった」

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