【TVクリップ】「探偵・由利麟太郎」吉川晃司「孤高の名探偵は心に嘘を付かない」





「由利麟太郎シリーズ」主演の吉川晃司(寺口純平撮影)

 横溝正史作品で、金田一耕助シリーズと並ぶ名探偵シリーズが原作。元警視庁捜査1課長の経歴を持つ名探偵で、「観察することで情報を得る。常に情報を頭の中に入れて、記憶というものを重ねて犯罪をひもといていくキャラクター」と分析する、冷静沈着な紳士を演じる。

 自身にとっては、地上波連続ドラマでの初主演。金田一に比べ、映像化される機会の少なかった由利は、警視庁随一の頭脳を誇りながら、ある事件をきっかけに退職した、組織に背を向けた役柄でもある。ファンの持つ由利のイメージについては「演技が小さくなる感じがして、あまり意識しなかった」とするが、しばし考え込んで、「けっこううまくいったんじゃないか」と自信をにじませた。

 これまで孤高さが際立つ役も多かったが、今回はミステリー作家志望で、助手の三津木俊助(志尊淳)らとの絡みも多い。「これまでは1人で成立する役ばかりだった。ほかの俳優と、根底では心が通じ合っていなければいけないという点で、今回は初挑戦」と打ち明ける。

 高校時代は水球で全国的に有名なアスリート。「団体行動は苦手じゃなかった」と振り返るが、「ミュージシャンになると、どんどん(団体行動が)苦手な生き物に変わっていったのでね。戻す必要があったかな」と笑う。

 その根はやはりシンガーだ。「ロック色が強いミュージシャンであるかぎり、見得(みえ)を切って生きている。世の中はそんなに甘くない、という言葉が大嫌い。俺は朱に交わっても俺のままでいたい」と語る“孤高”さは、時として近寄り難い空気感をもまとう。「若い頃は気持ちを表現したり、伝えたりといった戦う術を知らなかった。サングラスやいろいろなもので自分をプロテクトしないと怖くてしようがなかった」というが、「頑張って突っ張って生きているかというとそうではない。そういうことしかできないタイプなんだよ」と自身を分析する。

 子供の頃、納得できない気持ちがあっても、「大人になれば理解できる」とふたをされた経験から、己の心に嘘をつかない生き方を選んだという。「流れに乗るのが人の世なのかもしれない。だからこそ、どうやったら生き残れるかに興味がある。生き残れなくても、その生き方には多少の価値はあるでしょう」-。人間・吉川晃司は生き続ける限り、見得を切る。  (渡部圭介)

     

 きっかわ・こうじ 昭和40年、広島県出身。広島・修道高時代は水球選手として活躍。ジュニアの国際大会で日本代表にも選ばれた。59年に主演映画「すかんぴんウォーク」の主題歌「モニカ」でデビュー。63年に布袋寅泰とCOMPLEXを結成して、「BE MY BABY」などのヒットを飛ばした。平成2年からソロ。俳優としても活躍し、映画「るろうに剣心」や「さらば あぶない刑事」では主人公たちの敵役を好演したほか、NHK大河ドラマ「天地人」「八重の桜」、MBS系「下町ロケット」などにも出演した。



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