【ロンドン=板東和正】欧米で新型コロナウイルスのワクチン開発はもとより、将来のワクチン確保に向けた競争が激化している。先進諸国がワクチン争奪戦に終始すれば、経済力の乏しい発展途上国に行き渡らなくなる恐れもある。
世界保健機関(WHO)が公表した28日時点のリストによると、現在140以上のワクチンの開発計画が進んでおり、うち欧米などの17剤は人に投与して安全性や有効性を確かめる臨床試験(治験)に入った。WHOの主任科学者、スワミナサン氏は26日、英製薬大手アストラゼネカのワクチンが開発面で最も進んでいるとし、米バイオテクノロジー企業モデルナが開発中のワクチンも「(アストラゼネカに)大きく遅れはとっていない」と述べた。
ワクチンはまだ完成に至っていないが、欧米諸国は可能な限り早く国民に投与できるよう先手を打っている。早期の実用化が期待されているワクチンを購入する権利を得ようと躍起だ。
中でも、米国は他国に先駆けてワクチンの確保に力を入れてきた。米生物医学先端研究開発局(BARDA)は5月、英アストラゼネカに10億ドル(約1070億円)を支援し、ワクチンの供給を受けることで合意。英メディアなどによると、トランプ米政権は3月ごろ、ワクチンを開発する独企業を誘致するなどして、米国に独占的に供給させようと画策したという。
欧州でもドイツ、フランス、イタリア、オランダの4カ国はワクチン確保のために製薬会社との交渉で協力。13日にアストラゼネカと契約し、ワクチン最大4億回分を調達するめどをつけた。日本政府も今月、アストラゼネカ日本法人とワクチンの調達をめぐり、協議入りすることを決めた。
一方で欧州連合(EU)の欧州委員会などは27日、途上国を含む全世界にワクチンを行き渡らせる方策を話し合うため、オンライン首脳会議を開催した。フォンデアライエン欧州委員長や英仏独首脳らが会議に参加し、国際的な共同調達などのために計約61億5千万ユーロ(約7400億円)の拠出を約束した。