自民党は30日、ミサイル防衛のあり方を見直す検討チームの初会合を開いた。北朝鮮や中国のミサイル技術の高度化に対応するため、敵の発射基地を攻撃し発射をためらわせる「敵基地攻撃能力」の保有を求める意見が目立った。今後週1回ペースで開き、早ければ7月に意見集約を図る。自民党は3年前、能力保有の検討を政府に提言しており、今回も保有に向けて議論が進む見通しだ。
歴代内閣は、敵基地攻撃能力は自衛の範囲内で憲法に違反しないが、政策上保有しないという立場を引き継いできた。だが、政府が地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」配備計画を断念したのを機に、能力保有論が再燃した。
会合には防衛相経験者や国防族議員らが参加した。座長を務める小野寺五典元防衛相や出席者によれば、北朝鮮などのミサイル技術の高度化により、迎撃の難易度が上がっていることから「食い止めるためには敵基地に反撃できる長距離ミサイルが必要」などの意見があった。
小野寺氏は会合後、記者団に「国民を守るために議論を進める。憲法ののりはこえない中で議論していく」と述べた。
一方、岩屋毅前防衛相は会合で「イージス・アショアの配備が難しいからといって、一足飛びに敵基地攻撃能力の保有と考えるのは論理の飛躍がある。慎重の上にも慎重な議論が必要」と発言した。
自民党は北朝鮮が弾道ミサイル発射を繰り返した平成29年、敵基地「反撃」能力は専守防衛の範囲内だとして、政府に保有の検討を提言した。だが、30年末に決定した政府の「防衛計画の大綱」では、当時防衛相だった岩屋氏が保有の明記を見送った。
その後、北朝鮮は変則軌道を描く新型ミサイルの開発や、連続発射技術の向上に成功した。中国も極超音速ミサイルを開発し、日本の現行のミサイル防衛網では迎撃が難しくなっている。
ただ、敵基地攻撃能力を保有するには、敵の発射地点の特定など技術的な課題がある。連立を組む公明党は保有に慎重で、実現へのハードルは少なくない。(田中一世)