国会閉会を翌日に控えた6月16日昼、外相の茂木敏充は自身が会長代行を務める竹下派(平成研究会)の会合に顔を出した。国会が閉じれば、永田町の関心は衆院解散のタイミングや自民党の次期総裁選の行方に移る。
「ポスト安倍」の一人と目される茂木は会合後、記者団に総裁選に向けた対応を問われると、「世の中の状況がどうなっているかをみながら、よく議論していきたい」とけむに巻いた。だが、決して総裁選を傍観する腹ではない。
2日後の18日夜、都内のフランス料理店に姿を見せた茂木は、自民党衆院議員の村井英樹や小林史明、福田達夫ら、将来を嘱望される若手数人とテーブルを囲んだ。話題は茂木が得意とする経済政策から安全保障まで多岐にわたった。
出席者の一人がフランスで認められている事実婚制度に話を移し、「茂木内閣でやりましょう」と持ち掛けると、茂木は「それで出生率は上がるかな」と応じ、終始笑みを浮かべながら意見に耳を傾けた。
仲間内で「茂木勉強会」と呼ばれるこの会合は、茂木が経済再生担当相だった約3年前、自身のもとで内閣府政務官を務めていた村井に声をかけて始まった。村井と小林は岸田派(宏池会)、福田は細田派(清和政策研究会)に所属するなど、派閥を超えた茂木のネットワークとなり、数カ月に1度集まっている。
新型コロナウイルスの感染が国内で拡大し、学校の一斉休校が実施された直後の3月5日夜の会合では、若手から「お母さんたちが大変だ」「現金給付が必要」との声が上がり、茂木がその場で文部科学相の萩生田光一に電話をかけた。茂木は若手に「すぐに案をまとめろ」と指示し、翌日には萩生田のもとに届けさせた。勉強会メンバーの一人は「政策を実行させる腕力を見た」と振り返る。
商社や外資系コンサルタント会社を経て政界に転じ、「政策新人類」と称された茂木は、自ら政策を練り上げ、成し遂げることへの思いが強い。交渉力への評価も高く、経済再生担当相として日米貿易協議を担ったころには、米大統領のトランプから「モテギはタフ(手ごわい相手)だ」と一目置かれた。